『バンゲリングベイ』40年の誤解 『ボンバーマン』とは関係ナシ…どこで間違えた?
「バンゲリング三部作」と聞いてピンとくるのは、きっと当時のファミコンキッズ以上の世代でしょう。『ロードランナー』『バンゲリングベイ』そして……ここで『ボンバーマン』が浮かんだ人、それ誤解です。
初期のファミコンゲームでは拾われなかった「バンゲリング帝国」

2025年2月22日、ファミコン版『バンゲリングベイ』は発売から40周年を迎えます。
同作の敵が、『ロードランナー』や『チョップリフター』と共通の「バンゲリング帝国」というのは、それなりに知られたお話です。
そして当時のプレイヤー(主に「コロコロコミック」読者)のあいだでは、『ボンバーマン』が『ロードランナー』の前日譚であることは広く知られており、そこから「『ボンバーマン』はバンゲリング帝国からの脱出を描いたシリーズ作品のひとつである」と理解していた人もいるようです。
が、ファミコン版の『ロードランナー』や『ボンバーマン』の本編や取扱説明書は、帝国にひとことも触れていません。
実は上述の『ボンバーマン』を除く3作は、米国のブローダーバンド社が制作したPCゲームを原作としており、そちらでは説明書に「バンゲリング帝国」が登場します。ところが、ハドソン(当時)はじめ日本のメーカーがファミコンなどへ移植するにあたり、設定を引き継いだり引き継がなかったりしたのでした。
たとえばファミコン版『ロードランナー』(ハドソン)では、「地下の金鉱には金塊がいっぱい。でも恐いロボットが見張っているし」として、単純に盗みに入っています。
また、ジャレコ(当時)発売の『チョップリフター』(1986年)は、バンゲリング帝国が特殊武装集団「スワージュ」に置き換えられています。このゲームは「ヘリコプターが捕虜を救う」という内容であり、内容に比して敵が帝国では強大すぎる、と判断されたのかもしれません。
さらに言えば、ブローダーバンドの『スターブレーザー』というゲームにもバンゲリング帝国は出てきます。しかし、日本で1985年にMSXへ移植された際には「某軍事大国」に差し替えられていました。そのため、「実は三部作ではなく四部作だ」と指摘する声はあるものの、あまり知られてはいないようです。
このようにバンゲリング帝国は、日本では『バンゲリングベイ』でのみ言及される設定となるはずでした。が、『ロードランナー』は日米ともに大ヒットしたためか移植作や後継作が続き、それらで帝国の設定が改めて拾われたのです。
まず、セガSG-1000版『チャンピオンシップロードランナー』(1985年)の説明書には「バンゲリング帝国。そこは、金に狂った権力者達の集まりだった」と書かれています。
さらにアイレムのアーケードゲーム『Lode Runner バンゲリング帝国の逆襲』(1985年)ではタイトルにも入っている上に、「そこで見たものは悪魔の偶像に支配されたバンゲリング帝国の姿だった」とガッツリ言及しています。
そうしたなか1985年末、ファミコン版の『ボンバーマン』が発売され、ゲーム本編中で「SEE YOU AGAIN IN LODE RUNNER」と言及されました。上述したように、もともとファミコン版『ロードランナー』にバンゲリング帝国は出てきませんし、ハドソンオリジナルの『ボンバーマン』は最初から帝国とは無関係です。誤解の元、コレでしょう。
そもそもブローダーバンドの原作ゲーム3本も、「バンゲリング帝国」の名前を共有しているだけで、バックグラウンドを深掘りしていません。国内でライセンスを取得したメーカーが複数あり、「あえて(設定を)バラバラにした」のかもしれません。
そのようなわけで、「バンゲリング帝王」が出てくるのは『ファミコンロッキー』だけ!
(多根清史)