あまりに異色すぎる『仮面ライダー響鬼』知って納得なその誕生経緯…そらそうなるよ!
ファンが二極化した後半の展開とは

平成ライダーというと、低年齢層向けでありながらもシリアスさやリアルさを強調した作風で続いてきました。それゆえ時には仮面ライダー同士が衝突し、正義とは何かを視聴者に訴える作風が中心となります。
ところが本作の仮面ライダーである「鬼」は、温厚で仲間意識も強く、衝突するようなことは基本的にはありません。それまでの平成シリーズと比べるとホームドラマを思わせる明るい作風で、葛藤や心の闇といったマイナス面を持たない大人の戦士の物語でした。そういった揺れる心情は、弟子となる少年と少女に振り分けられています。
こうした心地いい空間のなかで、主人公である「ヒビキ」の背中に父を重ねる少年「安達明日夢(あだちあすむ)」の成長譚を、ゆるやかながらも着実に描く作品でした。ところが途中で状況が一変します。主導的立場にいた髙寺さんが、二十九之巻をもってプロデューサーを降板したのです。
代わりに三十之巻以降のプロデューサーとなったのが、劇場版のみの参加予定だった白倉伸一郎さんでした。そして脚本には井上敏樹さんが参加します。『響鬼』以前の平成シリーズを盛り上げたふたりです。
高寺さんの降板に関して理由は公表されておらず、本人もファンに詫びるコメントは残していますが、あくまでも真相は語らず、これまで沈黙を守っています。それゆえにファンからはさまざまな憶測が立てられました。
降板理由はひとまず置いておいて、あくまでも『響鬼』という作品から見ていくと、三十之巻以降はそれ以前と比べると違う作品と感じるほど、大きく様変わりすることになります。三十四之巻以降はオープニングを歌詞のある「始まりの君へ」へと変更、同時にEDを廃止することで従来のフォーマットに戻りました。
そして物語の舞台も、自然あふれる場所から、都会での戦闘が増えることになります。同時に山中でのロケ、CGを使った大型魔化魍の登場が少なくなりました。しかし、もっとも大きく変わった点は明日夢のライバル的存在「桐矢京介」の登場でしょうか。
京介の登場は、それまでのヒビキと明日夢の関係に大きく影響しました。これにより、それまでゆるやかに進んでいた人間ドラマは急速な動きを見せるようになります。登場人物の対立を軸に物語を動かす平成ライダーの定番展開とでもいえるかもしれません。
つまり前半の展開で平成ライダーから脱却した『響鬼』は、後半から平成ライダーらしい作風へと切り替わったといえるでしょう。これに関してファンの意見は二分しました。前半の雰囲気のある『響鬼』派と、後半の平成ライダーらしい『響鬼』派です。
個人的な感性でいうと、筆者は前半の比較的、人間関係のおだやかな『響鬼』が好きでした。しかし、それまでの平成ライダーが人気を博していた点を踏まえると、後半の『響鬼』を待ち望んでいたファン層の気持ちも理解できます。両方合わせて『響鬼』なのでしょう。
結果的に前半派と後半派とにファンを二分したものの、『響鬼』という作品は名作だったと、筆者は思っています。そして『響鬼』という異色作が早期に誕生したことは、シリーズの幅を広げる礎になったといえるかもしれません。
(加々美利治)

