朝ドラ『ばけばけ』の世界を40年以上前に描いた『日本の面影』 DVDもない幻のNHKドラマ
NHKの朝ドラ『ばけばけ』の放送開始が近づいてきました。主人公たちのモデルとなった小泉八雲とセツの物語は、1980年代にも名脚本家・山田太一氏によって『日本の面影』としてTVドラマ化されています。小泉八雲の名著『怪談』のエピソードも盛り込んだユニークな内容でした。国際色豊かなドラマだった『日本の面影』を振り返ります。
小泉八雲・セツ夫妻を主人公にしたNHKドラマ

「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」
そんなキャッチコピーが謳(うた)われているのは、2025年9月29日(月)から放映が始まるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』です。明治時代の日本に来て、『怪談』などの著書を残すラフカディオ・ハーン(のちの小泉八雲)とその妻となる小泉セツをモデルにしたドラマです。
アクション映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)に主演した髙石あかりさんがヒロインの松野トキ役、エミー賞受賞ドラマ『SHOGUN 将軍』(2024年)でポルトガル人司祭に扮したトミー・バストウさんがヘブン役を演じることになっています。
実はハーンとセツをモデルにしたドラマをNHKが制作するのは、これが二度目です。1984年3月に1話80分で全4話構成のスペシャルドラマ『日本の面影』がNHK総合で放映されています。ハリウッド映画『ウエスト・サイド物語』(1961年)でアカデミー賞助演男優賞を受賞したジョージ・チャキリスさんがハーンを、壇ふみさんがセツを演じた話題作でした。他にも伊丹十三さん、津川雅彦さんらが出演しています。
企画を提案し、脚本を手掛けたのは前年に『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)を大ヒットさせた人気シナリオライターの山田太一氏です。雪女や耳なし芳一も登場した『日本の面影』は、どんなドラマだったのでしょうか。
日本の神話や怖い話に魅了されたラフカディオ・ハーン
物語は19世紀の米国ニューオリンズから始まりました。新聞記者をしていたハーンは、日本の歴史書『古事記』の英語版を読み、日本の文化に強く惹かれます。ハーンが生まれたギリシャと同じような神話が日本にも伝わっていることに興味を持ったのです。
日本に来たハーンは、松江で中学校の英語教師となり、和風の生活をすっかり気に入ります。まだ鉄道が通っていなかった山陰地方には、落ち着いた情緒が残っていました。そして、出雲大社など寺社仏閣が多い松江は、ハーンが愛読した『古事記』の舞台でもありました。ハーンは身の回りの世話をしてくれる士族の娘・小泉セツと結婚し、小泉八雲となります。
ハーンは日本の伝統文化を愛しましたが、ひときわ大好きだったのはセツが語る怖い話でした。文明開化が進む明治時代にあって、ハーンは日本に伝わる不思議な世界に魅了されていきます。
ハーン役のジョージ・チャキリスさんは日本語はまったく話せなかったそうですが、ハーンと同じギリシャにルーツがあったことから、NHKが米国で行ったオーディションを受けたそうです。壇ふみさんから日本語のセリフを教えてもらいながら、ハーン役を好演しています。
また、劇中劇という形で毎回盛り込まれていた怪談噺(ばなし)も見どころでした。



