『北斗の拳』令和版はなぜ3DCGに? 前田監督が語る「動く劇画」への挑戦
残酷表現は「萎縮する必要はない」

ーー『北斗の拳』といえば、容赦ない人体破壊表現も大きな特徴です。現代の作品として描くうえで、難しさはありましたか。
前田 もちろん海外展開もありますし、規制のことを考えなければいけない部分はあります。でも、残酷表現も『北斗の拳』の大きな魅力のひとつです。そこを最初から萎縮して描く必要はないと思っています。
まずは自分たちが表現したいものを最大限に描く。そのうえで、撮影や編集の技術で調整する。表現したいものを先に出す、という姿勢は大事にしました。
ーー原作表現の整合性をどう再現しましたか? たとえばマミヤの弟コウの火葬シーンなどです。
前田 コウの火葬の場面では、原作と同じようにとても大きな薪を井桁に組んだ焚き火が出てきます。普通に考えたらビルのような焚き火は不自然に見えるかもしれませんが、あえてリアルに寄せませんでした。あれはあの子を失った悲しみの大きさなんです。
現実的なサイズ感だけを考えたら小さくする選択もありますが、原作表現を再現すること、感情の衝撃を視覚化することを優先しました。
ーー原作では独特のギャグシーンもあります。アニメではどのように取り入れましたか。
前田 北斗のギャグに関しては、武論尊先生や原先生が意図して仕込んだ部分と偶然生まれてしまった部分があると思っています。先ほどの巨大な薪の件もそうですが、派生作品でそういうツッコミどころがネタとして扱われている部分もあります。
北斗のギャグってわかりやすいものもあり、ブラックなものもありと絶妙なバランスなんですよね。なので僕が整合性やリアルさにこだわって修正してしまうのは野暮だな、と。僕やスタッフがおもしろいと感じているものは全部残そうと思っています。
ーーアニメではジャッカルが爆破されるシーンの表現が凄くて。シリアスな笑いがこみ上げてきました。
前田 あれはハーモニーというアニメ表現で、背景美術の方が描いてくれました。少し3DCGと手描きの作画の話に戻りますが、手描きの絵、止め絵には凄くパワーがあります。
原先生がモノクロの原稿のなかに突然カラー原稿をドンと入れたときの「わ、かっこいい!」という驚き、心の動き。そういうのを3DCGと手描き作画を使い分けることで、アニメで表現しようとしています。
●この辛い世界を駆け抜けていこう
ーー今回のOP曲『Hallelujah』についてお聞かせください。
前田 [Alexandros]さんには1点、「世紀末の世界なので人もいないし物もないし、寂しくて悲しくて辛くて、虚しい世界なんだ」っていうのを、スパイスとして入れて欲しいとお願いしました。
結果、すごく疾走感のある曲が、世紀末の世界観を一気に表してくれる感じになったと思います。辛い世界の中でもこのスピード感で駆け抜けていこうっていう希望すら見える曲だと僕は思っていて、大好きです。
ーー最後にお聞かせください。第1シーズンを経て、今後の放送で特に注目してほしい映像表現やキャラクターはありますか。
前田 やっぱり「ジャギ」ですね。北斗四兄弟はみんな好きですが、特にジャギは最高です。ぜひ登場を楽しみにしてください。
●前田洋志(監督)
サテライトにて撮影進行、撮影を経てOVA『マクロス・ゼロ』、TVシリーズ『創聖のアクエリオン』等の撮影監督を務める。StudioBACUへ移籍後、中国、芒果TV配信の『積高侠与阿里巴巴』(※)にて総監督補佐を務め、同作は累計5億再生を記録。劇場アニメ『AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』撮影監督、『ルパン三世VSキャッツ・アイ』オープニング演出・撮影、等を手掛ける。
※…『積高侠与阿里巴巴』の「積」は、正しくは「のぎへんに只」
(レトロ@長谷部 耕平)



