「このマンガがすごい!」を席巻する「和山やま」作品。繰り返し味わえる“旨み”とは?
「取りに行かない」コメディの開拓

そして、物語の進行を無くし、より些細な日常をコメディへと昇華させた作品が、初の連載作品『女の園の星』です。
同作の舞台はとある女子校、2年4組。そこで担任をつとめるのが主人公・星先生。生徒たちが学級日誌で繰り広げる絵しりとりに翻弄され、教室で犬のお世話をし、漫画家志望の生徒にアドバイス。時には同僚と飲みに行く。
これが第1巻の中で行われている出来事の全てです。
こんなにもなんでもない日常が、笑えて笑えて仕方がない。
例えば、先生が職員室でサンドイッチを食べる姿を見て、「この人ごはん食べるんだ」と思った……という女子高生の描写。当たり前だろ!と思う反面、追憶の学生時代の私が「私もそれ思ったことある!」と共感しているのを感じます。
女子高校生像をひとくくりに描くことなく、また教師をあくまでも普通の人間として描く和山先生の表現に、凝り固まっていた人間像が融解されていきます。ローテンションのなかで続く笑いが心地よく、「こうだろ!笑とはこうだろ!面白いだろ!」という押し付けがありません。
非日常的な設定もいらない。奇抜なキャラクターもいらない。
もしかしたら和山先生の手にかかれば、奇抜なキャラクター像も「あーいるいる(笑)」と、身近に感じられるのかもしれません。
みんなちょっと面白い。生きるのにちょっとダルそうなのに、なんか面白い。そんな登場人物たちが掛け合わさると、今まで味わったことのない和山ワールドを体験できます。
精密な背景や、それ自体が人間を語ってくれる小道具など、読み返しては、クスリと笑えるポイントをいくらでも採掘できる、旨(うま)みあふれる和山やま作品。これからも、和山先生に目が離せません。
(別冊なかむらりょうこ)



