何度でも立ち上がる福島のヒーロー『ダルライザー』の今。震災を機に「口を開いた」
2011年3月11日に起きた東日本大震災から、もうすぐ10年が経ちます。福島県白河市を舞台にした映画『ライズ ダルライザー』は、震災がきっかけで、2017年に製作されたSFヒーローものです。「何度転んでも立ち上がる」という不屈の精神をモットーにする等身大のヒーロー・ダルライザーの近況を伝えます。
白河だるまがモチーフの、ご当地ヒーロー
みなさんは、「ダルライザー」という名のヒーローをご存知でしょうか? ダルライザーとは、福島県白河市を守るご当地ヒーローです。白河市の名産品である「白河だるま」をモチーフとし、街の活性化を目的に2008年に誕生しました。レッドカラーを基調にしたマスクとコスチュームは、なかなかのかっこよさです。
「何度転んでも、立ち上がる」という不屈の精神をモットーとするダルライザーは、考案者である和知健明(わち・たけあき)さんが主演とプロデューサーを兼ね、2017年に『ライズ ダルライザーTHE MOVIE』として映画化されています。ロケ地は白河市内で、白河市民がメインキャストを演じています。
和知さんが自主配給した『ライズ ダルライザー THE MOVIE』は、大きな反響を呼びました。2019年には新たに編集された『ライズ ダルライザー NEW EDITION』として、東京をはじめ日本各地での劇場公開も果たしています。
ハリウッド映画で知られる武術家も参加
映画『ライズ ダルライザー』は、こんなストーリーです。主人公のアキヒロ(和知健明)は東京で舞台俳優をしていましたが、生活はカツカツ。妻のミオ(桃奈)が妊娠したのをきっかけに、実家のある白河市へと戻ります。警備会社で地道に働き始めるものの、アキヒロは俳優としての夢を捨てることができません。
白河市が主催するキャラクターコンテストに応募するために、だるまをキャラクター化したダルママンを思いつきます。ダルママンという呼び名ではダサいということから、ミオの協力でダルライザーと命名されるのでした。物語前半は、和知さん自身の半自伝的なドラマとなっています。
一方、街では天才的科学者・田村(田村論)を中心とする秘密組織「ダイス」が暗躍。パーソナルシートと称したハイテクガジェットを市民に無料配布し、人々の意識をひとつに結びつける「シャングリラ計画」を進めていました。この計画が実現すれば、街で暮らす人びとは孤独感から解放されますが、少数派の存在は認められなくなります。ダイスの暴走を阻止するため、アキヒロはダルライザーのコスチュームに着替え、過酷な闘いに挑みます。
限られた予算で製作されたSFアクション映画ですが、全編に郷土愛があふれています。ダルライザーには、必殺技も特殊能力もありません。でも、「何度でも立ち上がる」というド根性と、「これから生まれてくる子供たちのために素晴らしい故郷を残したい」という父性愛を胸に、最後まで闘い抜きます。
ハリウッド映画『バットマン ビギンズ』(2005年)や『アウトロー』(2012年)などのアクション大作に関わったスペインの武術家フスト・ディエゲス氏が来日し、アクション指導&出演しているのも、話題となりました。東日本大震災と福島第一原発事故で傷ついた福島の人たちを少しでも励ましたいという想いから、フスト氏は映画制作に協力したそうです。