「セーブ方法とデータ消失」との戦いの歴史―『ドラクエ』パスワード、メモリーカード…
ゲームの続きを遊ぶには、進行を保存する「セーブデータ」が欠かせません。家庭用ゲーム機の進行データの保存は「パスワード」から始まり、時代に合わせて着々と進化。そしてこの歩みは、データの消失に怯えた歴史でもありました。
ファミコン時代に激変、セーブデータの保存手段
ゲームを継続して楽しむには、「セーブデータ」の存在が欠かせません。ファミリーコンピュータの時代から現在に至るまで、その重要性に変わりはありませんが、データを保存する手段は時代によってその姿を変えています。
いつの時代も、多くのプレイヤーが「セーブデータの消失」を恐れていました。データの消失はプレイ時間の喪失でもあり、取り返しのつかない悲劇です。今回は、セーブデータの歴史を振り返りつつ、当時起きた悲劇の形を見つめ直します。
●セーブ自体がなかったファミコン時代
ゲームの進行を保存する「セーブ」は、家庭用ゲーム機の登場以前からありましたが、広く知られるようになったのは、ファミコンの一大ブームに負うところが大きいでしょう。
そもそも、ファミコンの最初期は、「ゲーム進行をセーブする」方法そのものがありませんでした。長時間かけてクリアを目指す作品が最初期のファミコンソフトにはなく、プレイ進行をセーブする必要がなかったためです。
そんな凪のような時代から始まった後、ファミコンにまず登場したセーブ方法は「パスワード」でした。ゲーム進行がパスワード化され、その文字をリアルに書き残し、次回プレイする際に入力する、というもの。『ドラゴンクエスト』の「ふっかつのじゅもん」が特に有名です。
アナログ全開な手段ですが、見方によっては原始的な外部記録装置と言えます。ですが、「パスワードを写し間違える」という致命的な事故も起きる、危険な記録方法でもありました。もちろんミスする側が悪いのですが、当時の画面は表示された文字が判別しづらかったので、一概にプレイヤーを責められません。
このアナログ期を脱した次の一手は、ファミリーコンピュータ ディスクシステムの登場によって実現した、「ディスクカード」(磁気ディスク)への書き込みです。ディスクカードには、ゲームデータ自体とセーブデータを書き込むことができ、ボタン操作だけでゲーム進行を保存可能になりました。
しかし、磁気ディスクは磁気を発するものからの影響を受けやすく、取り扱い方法の周知も徹底されていなかったため、物理的な要因でデータが壊れるケースが発生。また、しばらく後に「バッテリーバックアップ」を搭載したゲームカセットが現れたため、セーブ面におけるディスクカードの優位性は長く続きませんでした。
カセットに搭載された「バッテリーバックアップ」は、電池を用いてセーブデータを保存する手段です。利便性が高く、ファミコンだけでなくスーパーファミコン時代にも活躍。NINTENDO64になるとフラッシュメモリなどの選択肢も加わりましたが、バッテリーバックアップを採用したソフトもまだありました。
長年愛されたバッテリーバックアップですが、安全性についてはまだ万全とは言えません。ゲームソフトの抜き差しなどによる衝撃や誤作動が原因で、セーブデータが消える悲劇がありました。『ドラゴンクエストIII』から始まったシリーズおなじみのデータ破損時メッセージ「おきのどくですがぼうけんのしょはきえてしまいました」は、時代を越えてもなお記憶に残る一文です。