手塚治虫が執拗に描いた「戦争」の真理 「一度傾いた流れは止められない」?
手塚治虫先生の作品といえば、その内容が未来の世界を「予言」していると言われるものも多くあります。今回はそんな手塚作品から「戦争」をテーマにした名エピソードを紹介。「戦争」の先には果たしてどんな「末路」が待っているのか……現在、私たちが暮らす現実の世界も不安定な情勢が続くなか考えさせられる作品ばかりです。
戦争を「止めようとした」者にも光を当てる

今から81年前の1941年12月8日、日本軍によるハワイ・真珠湾への奇襲攻撃が行われ、日本とアメリカによる4年に及ぶ太平洋戦争が始まりました。そして2022年の現在も世界では戦争が起こっており、日本も決して無関係とは言えません。
今回は手塚治虫先生の作品から「戦争」について描かれた4つの作品を紹介します。私たちが暮らす現代や未来の世界についても考えさせられる作品ばかりです。
●『太平洋Xポイント』
まずは『太平洋Xポイント』という作品です。物語は、コスモポリタン国の科学者・ナーゼンコップ博士が「空気爆弾(空爆)」という地球上の空気を連鎖的に爆発させてしまう恐ろしい兵器を開発したことから始まります。コスモポリタン国は敵対しているユーラシャ国に「空爆」の威力を示そうと太平洋上のとある島で爆発実験を起こすと発表。世界の人びとは「地球が滅びてしまうのではないか」と怯えます。
ここで立ち上がったのが、かつては泥棒だったサムという男。サムは息子のエリックとふたりで、実験場所のアナタハン島へ潜入。空爆が積み込まれた船を爆破し、実験を阻止することには成功したものの、銃撃され命を落としてしまいました。
●『ロック冒険記』
続いては『ロック冒険記』という作品です。主人公の少年・ロックは、父のディモンが発見した新たな惑星・ディモン星の探検へと旅立ちます。そこで発見したのは石油で満たされた黒い海、そして人間に似た姿をした「エプーム」と呼ばれる鳥人間の種族でした。ロックはまだ文明があまり発達していなかった「エプーム」たちに火の使い方と知恵を伝授。豊富にある石油資源も活用し、ディモン星は大きく発展します。しかし、そこに目をつけたのが欲深き地球人たちでした。彼らはディモン星に兵器を持ち込み「エプーム」たちを大量に誘拐。奴隷として地球に連れ帰ります。
しかし「エプーム」たちもただ侵略されるだけではありませんでした。ディモン星の豊富な資源を活かし、人類の兵器を真似て独自に武器を開発。反撃に出ます。しかも彼らは人類にとって恐ろしい病原菌を伝染させることもできたため、人類の方が逆に追い詰められるほどになりました。最後はロックの奮闘で両惑星の全面戦争を止めることには成功しましたが、ロック自身は命を落としてしまいました。