富野由悠季監督のSF大作『イデオン』が残した、トラウマ級の伝説とは
観客にトラウマ与えた『発動篇』の影響

テレビ放映された『ガンダム』を再構成した劇場版三部作(1981年〜82年)が大ヒットし、アニメブームが勃発。『イデオン』も、テレビシリーズの総集編である『接触篇』と、打ち切りのためにお蔵入り状態となっていた4話分のコンテをもとにした『発動篇』の2部作として、1982年に劇場公開されます。この、本来のエンディングである『発動篇』が、観客に強烈なトラウマを与えることになったのです。
コスモたち人類側と異星人バッフクランとは、停戦するチャンスがあったのですが、お互いに恋人や家族を奪われた憎悪から、戦いを止めることができません。「善き心によって、より善く発動する」と言い伝えられてきた伝説の巨神・イデオンはついに無限の力を発動。人類とバッフクランは共に全滅することになるのです。そのなかには、イデオンを操縦するコスモたちも含まれていました。
生き残ったのは、バッフクラン出身のカララとユウキたちが乗るソロシップの艦長ベスとの間に誕生した胎児メシア、それにソロシップ内で育った人類側の赤ちゃんパイパー・ルウだけでした。戦死したユウキたちは生まれたままの姿の霊魂となり、宇宙を飛び交います。新しい星で新しい人類として新しい物語が始まる、というSFアニメ史上かつてない壮大すぎるフィナーレでした。
イデオンは謎の古代遺跡から発掘された巨大ロボットでしたが、これは富野監督の初めてのロボットもの『勇者ライディーン』(1975年〜76年)から受け継がれたものです。富野監督は過去の遺産を若者が使いこなすという設定が好きなようで、『ターンエーガンダム』(1999年〜2000年)でも、“ヒゲのガンダム”を黒歴史の遺物として登場させています。
また、登場キャラクターたちが次々と亡くなっていくハードな展開は、庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、君に』(1997年)に大きな影響を与えることになります。