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富野由悠季監督のSF大作『イデオン』が残した、トラウマ級の伝説とは

富野監督のイド(潜在意識)を呼び起こしたイデオン

 無限の力を放つイデオンとは、一体何だったのでしょうか? 見た目はあまりかっこよくないイデオンは、一種の“よりしろ”だったように思えます。イデオンを通して、コスモたちは惑星を破壊するほどの強力なイデのパワーを手に入れますが、同時にそのパワーを制御することができずに振り回されるはめに陥ります。

 コスモと同じように、富野監督も巨大ロボットというキャラクターを“よりしろ”にして、物語を次々と生み落としていくことになります。視聴率、テレビ局や製作会社の意向、番組スポンサーの思惑に振り回されながらも、巨大ロボットにメッセージを託して今も新作アニメを撮り続けています。

「絵コンテ千本切り」を目指して制作現場を渡り歩いた放浪時代の体験、『無敵超人ザンボット3』(1977年)の賛否を呼んだ最終回、『ガンダム』放送打ち切りの屈辱など、富野監督のさまざまな思いが『イデオン』には投影されているように感じられます。

 主人公たちが輪廻転生するエンディングは、「虫プロ」時代の師匠である手塚治虫の代表作『火の鳥 未来編』も彷彿させます。『イデオン』放送時39歳だった富野監督のイド(潜在意識)の力を、逆に発動させたのがイデオンだったのではないでしょうか。

 富野監督は次回作『戦闘メカ ザブングル』(82年)から、クレジット表記を本名の「富野喜幸」から「富野由悠季」へと変えることになります。富野喜幸監督としての最後の作品、そして集大成が『伝説巨神イデオン』だったのです。

(長野辰次)

【画像】心をえぐる驚愕の結末! 『イデオン』伝説の劇場版(5枚)

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