『サザエさん』の人気者・ノリスケには元ネタの「適当キャラ」がいた?
「わだいにちょっとげひんなとこがあるんでネ」

のん助がサザエそっくりの女性(ただし、サザエと違ってかなり上品)とお見合いするエピソードでは、女性に「ずっといぜん(以前)よ」と言われると「ずっとひぜん(疥癬/寄生虫の一種)よ」と聞き違え、「かいちゅう(懐中)にごようじんあそばせ」と忠告されると回虫(腸の寄生虫)と勘違いして、「あなたも出ましたか!」と言い、しまいには難物夫婦に「わだいにちょっとげひんなとこがあるんでネ」と、お見合い相手への愚痴をこぼしていました。下品なのは、頭のなかがそういう話題でいっぱいだった、のん助のほうでしょう。
ノリスケが『サザエさん』に登場するのは、『似たもの一家』の連載が終わった3年後にあたる、1952年(昭和27年)です。新聞社勤務で博多から東京に転勤が決まり、居候する磯野家に連絡もせず、いきなり荷物を送りつけるという図々しさ満点の登場でした。
ノリスケは登場してすぐさま、ごはんを4杯食べ、勤務が遅番の日は朝食だけ食べてまた眠り、幼稚園児のワカメに「早くおよめさんをもらいなさい」と言われるという活躍ぶりを見せています。その後の登場頻度も非常に多く、タイコとの結婚のエピソードは数回にわたる連作で描かれていました。これは『サザエさん』で初めてのことです。
のん助もノリスケも、長谷川先生がとても気に入っていたキャラクターだったように見えます。だから、早い時期で「移籍」が決まったのではないでしょうか。『サザエさん』に登場するのがノリスケより後で、登場頻度も多くなかった伊佐坂一家に比べると、ずっと愛されていたと思います。
長谷川先生が気に入っていたと思しきノリスケが、アニメスタッフに受け継がれて、初登場から70年以上(!)たった今もなお、『サザエさん』ファンに愛されているのは本当にすごいことだと思います。今後のノリスケの活躍にも期待したいところです。
(大山くまお)