人気がありすぎて終焉? 仮面ライダーV3「ゾル・死神・地獄・ブラック」素顔の敵幹部が減少した理由とは
「歴代悪の大幹部が復活」という一大イベントから半世紀。放送当時、人気の高かった素顔の大幹部たちの復活劇は『仮面ライダーV3』でも最大の見どころでした。しかし、その人気はいつの間にか途絶えてしまいます。
第3クール突入で提出されたいくつかの強化案

本日8月18日は、1973年に『仮面ライダーV3』第27話「生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック」が放送された日です。特撮番組史上あまり例のない前番組の敵幹部集結で、今なお話題になることの多いエピソードでした。
この敵幹部集結は当時の児童雑誌トップを飾る一大イベントで、その集合写真はインパクト絶大。後の書籍でもよく見かける定番の写真となりました。この敵幹部集結はどういった経緯で行われたのでしょうか?
話数を見ると一目瞭然ですが、このイベントは3クール突入の時期、つまり新規クールの強化案のひとつでした。『V3』はクールごとにさまざまな強化案を投入したことでも知られています。
2クール突入時には2話連続スタイルと26の秘密の廃止、そして新幹部ドクトルGの投入がありました。このうちひとつ目は当初、前後編にすることでV3のピンチを描いた後に26の秘密による逆転劇での盛り上がりを想定していたそうです。
ところが、当時の子供たちはこれを「V3が弱いからだ」。……と思ったそうです。そこで1話完結を基本とし、話を複雑化させる26の秘密の解明も棚上げとなりました。この時、同じく話を複雑にさせる風見志郎と珠純子のストーリーの掘り下げも終結させました。
そして、新幹部ドクトルGという強敵を登場させて戦いを盛り上げる方向にシフトします。それまでの幹部と違って前線でV3と戦うドクトルGは、その強さが強調されました。このドクトルGと互角に戦うV3も強いという方向性で、善悪双方の強さを引き立てたということです。
こういった路線変更で2クールは盛り上がり、作品人気を決定づけました。そこで3クールとなるわけですが、ここでの強化案にはキー局である毎日放送が大きく関わってきます。毎日放送が要求したのが前番組『仮面ライダー』の登場人物の再登場でした。
最初に白羽の矢が立ったのが滝和也。当初のアイデアのなかには単に再登場するだけでなく、仮面ライダー1号と2号によって毎週少しずつ改造されて最後には仮面ライダー4号になるというものもあったそうです。
このアイデアが後の「ライダーマン登場」という形へとなりました。相棒という部分はインターポールのデストランハンター、佐久間ケンという形で画面に登場することになります。滝との差別化で二枚目半のキャラに設定しましたが、いつの間にか姿を消すことになりました。
この他にも企画されていたのが石倉五郎のセミレギュラー化です。演者である三浦康晴さんの中学校進学により前作途中から降板していましたが、毎日放送は絶大の信頼を寄せていました。おそらく出演していれば、前作ではかなわなかった少年ライダー隊の制服に袖を通していたことでしょう。
この流れからかは不明ですが、人気のあった4大幹部の復活が決定されます。この時期にはドクトルGが怪人となって降板することも決まっていたので、最後の花道という意味もあったのかもしれません。
このドクトルGの降板劇も使われなかったアイデアがあります。ドクトルGの正体だと思った怪人Aを倒した後、姿を見せるドクトルG。その後、怪人Bが現れるが今度こそドクトルGの正体か? ……という展開です。
しかし、このアイデアは児童雑誌の特集と相反するということで棄却されました。当時の児童雑誌は、TVでわからないことを特集するのが基本方針みたいなところもありましたので、そういった理由から視聴者が先の展開にハラハラするドラマ作りはむずかしかったのでしょう。