『ブラック・ジャック』みんなマジだと思ってた 「あったら怖い奇病」3選
「人工心臓の故障」による病気?
●病名「本間血腫」:第15巻149話「本間血腫」

あるプロ野球選手が、「本間血腫」になります。心臓の左心室のなかに血の塊ができ、何度取り除いてもまたできてしまうという、世界に20数例しかない難病で、患者はみんな死亡しています。B・Jは病院からオペを依頼されますが、断ります。理由は師である故・本間丈太郎医師の手紙に、「手を出すな」と書かれていたからでした。
「本間血腫」は本間先生が挑んでも治せず、社会から「生体実験」だと非難されたいわく付きの病気です。師のかたきを討つため、B・Jは自作の人工心臓の移植手術を始めます。しかし、患者の心臓を見るとそれは精巧な人工心臓でした。本間血腫とは「人工心臓の故障による病気だったのか!?」。人工心臓を取り替えることなく閉胸するB・Jは、「医学の限界か」と落胆するのです。
この病気は症例が少ないというのが、ミステリアスでした。心臓に血の塊ができるという病気は、実際にありそうとも思えます。この回は謎を残す物語で、この患者に移植された「人工心臓SR型使用20体の内No20 極秘 19××年×月×日」と書かれた人工心臓は、どこで誰が造って移植されたのか明確になっていません。実は、アニメ編で「B・Jの父が開発者」という話が制作されていますが、マンガでは最後まで触れられません。
以上、「マジかと思った」というくくりで3つの病気を挙げました。オリジナルの病気はまだいくつもあります。
たとえば「ブラック・ジャック病」(第21巻197話)は、アフリカの小さな国で、胃が萎縮、硬直して発作を起こしたときにはもう手遅れという奇病です。現地の医師が、彼なら治してくれると願いを込めてB・J病と名付けました。
この物語は2話完結で、続くタイトル「落下物」で原因はヤムイモから検出された放射能であることが判明します。それは2、3年前に墜落した原子炉衛星の影響だとB・Jは確信しました。この「落下物」は封印作となり、少年チャンピオンコミックスには掲載されていないので「ブラック・ジャック病」しか読んでいない人は続きを知らずモヤモヤが残るはずです。ちなみに「落下物」は「文庫BLACK JACK Treasure Book」に収録されています。
手塚先生は、『ブラック・ジャック』はリアルな医学を物語のメインとせず、命の尊さや人間の生き様を描きたかったそうです。その題材として、ときにはオリジナルの病気を作り、誰も知らない謎の奇病と戦う医師と患者と周囲の人たちといった人間模様を描いたのではないでしょうか。
(石原久稔)




