カラータイマーだけじゃない 子どもたちをハラハラさせた特撮ヒーローの弱点設定3選
お世辞にもカッコいいとはいえないヒーロー…?

『キカイダー』でジローを演じた伴大介さんは、のちに再び石ノ森章太郎先生原作のヒーロー、『イナズマン』の主演を務めます(伴直弥名義)。
このイナズマンのウリは、画期的ともいえる二段変身でした。蝶をモチーフにしたイナズマンに変身するために、まずサナギの状態であるサナギマンに変身しなければならないのです。当時、このサナギマンの造型が「いろいろな意味で凄い」と話題になりました。なぜなら本当のサナギをイメージしているため、お世辞にも格好いいとはいえなかったからです。
サナギマンは金剛力士像をモチーフにしていて、変身時のかけ声「剛力招来」も金剛力士に由来しています。サナギマンのときには、力のレベルが戦闘員より上であるものの、各話ごとの敵ボス「ミュータンロボ(怪人)」と戦うときには防戦一方というレベルです。敵の攻撃に耐えに耐えてベルトのゲージが溜まると、「超力招来」のかけ声でサナギマンの身体が爆発、その中からイナズマンが登場します。
イナズマンの圧倒的強さを強調するためか、サナギマンは上述のように弱く設定されていたため、当時の子どもたちは誰しも「早くイナズマンに変身しろ!」と思っていたそうです。そのせいか、続編『イナズマンF』では、サナギマンの時間は極力、短縮されています。
■エネルギーが枯渇すると仮死状態になるヒーロー
これまでのいわゆる「ヒーローもの」は、大きくふたつに分類されるといえるでしょう。すなわち、「普通の人が、何らかのきっかけで特殊能力を授かり、変身する」「宇宙人、未来人などのように最初から特殊能力を備えている」という類型です。
1972年にTV放送が開始された『愛の戦士 レインボーマン』は、そのどちらでもありません。元々ごく普通の人間で、アマチュアレスリングの選手だった主人公のヤマトタケシは、なんとヨガの修行によって得た神通力で変身するのです。当時はもちろん、いまなお斬新といえる設定でしょう。
レインボーマンは火の化身、水の化身、草木の化身、など全部で7様態に変身し、空を飛ぶ、ビームを出すなど、ほぼ万能で無敵の状態でした。
ただ唯一かつ致命的な弱点だったのが「ヨガの眠り」です。エネルギーを使い切ると、レインボーマンはヤマトタケシの姿に戻り、座禅を組んだまま白く石のように固まってしまうのです。ヨガの眠りが解けるまでの5時間は、タケシは意識がない状態で、文字通り完全無防備になります。レインボーマンの時にエネルギーを消耗しないよう戦えばいいのですが、タケシは何事も全力で取り組む熱い男でした。
この「ヨガの眠り」の設定は物語の随所に見られ、敵対する悪の組織「死ね死ね団」の作戦が進行して人々が犠牲になるだけでなく、タケシ自身が捕らえられて火あぶり寸前になるなど、数々のピンチを演出しました。
もちろん、そうしたピンチに見舞われても必ずそれを脱し、最後は逆転し勝利をおさめます。とはいえ当時の子どもたちは「レインボーマンになれたらうれしいけど『ヨガの眠り』だけは勘弁してほしい」と思ったことでしょう。
大ヒットを記録した『月光仮面』を手がけた川内康範先生の作品だけあって、レインボーマンも当時、大いに人気を博したそうです。
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ヒーローの弱点はドラマを面白くする半面、設定を間違うと視聴者の離脱を招く恐れもあります。現在では「視聴者に引かれるくらいの弱点は設定しない方が無難」ということで、無敵のヒーローが多いのかもしれません。
※『人造人間キカイダー』『イナズマン』放映当時の石ノ森章太郎先生は「石森」名義
(LUIS FIELD)