TVアニメ「ヒット」の予測が難しいワケ。そもそもヒットの基準は?【この業界の片隅で】
アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が、業界の片隅で拾った様々な話題を取り上げて解説します。第3回は、「まさかヒットするとは思ってもみなかった作品」について。何をもって「ヒット作」と呼ばれるのか、意外と定めにくい基準についてもお話します。
部外者が「ヒットするかどうか」を見極めるのは不可能に近い
2017年1月から放送されたTVアニメ『けものフレンズ』の第1話が放映された翌日、同じアニメ業界の方に感想を訊かれた私は答えました。
「かわいそうだと思いますね」と。このような意味です。
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第1話を視聴した限り、内容は平凡。3DCGのクオリティも、お世辞にも高いとは言えず、予算的にも人員的にも最初から逼迫している様子がうかがえます。子供向けのつもりかもしれませんが、深夜放送だと、その子供が視聴してくれる可能性は当然低い。かと言って、大人が興味を持つキャラクターや世界観とも思えません。
それでも製作に踏み切ったのは、よくある「企画としてストップがかけられない段階」まで進んでいたからでしょう。そんなタイトルを最終話までやり切らねばならないわけですから、この福原プロデューサーと、たつき監督ですか? 私は存じ上げないおふたりですが、他人事ながらかわいそうだと思いますね、本当に。
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かわいそうなのは、私の頭と感性の方でした。
『けものフレンズ』が、アニメファン以外の幅広い層にまで大旋風を巻き起こしたことは、皆さん既にご存知の通りです。
私の見る目に問題があるのはともかく、予測を大きく外したのは私だけなのでしょうか? そうではないように思います。
『けものフレンズ』の第1話が放映された時点で、「これはヒットする」と言っていた人間は、少なくとも私の周囲では皆無です。同じくヒット作となったアニメ『ゾンビランドサガ』でも、似たような状態だったと記憶しています。
もちろん、作品に携わるスタッフの皆さんには、「これなら絶対にヒットするはず!」という自信と確信があったのでしょう。けれど、部外者がそれをくみ取ることは、事実上不可能に近いほど困難なのです。
この業界、売れた途端に、「俺が力を貸してやった」「俺がアドバイスをしてやった」「実は最初のアイデアは俺が作った」と称する部外者の方々が、どこからともなく現れては、お近づきを求めてくることがままあります。そういった方々は、どうやら超能力をお持ちらしく、「最初から絶対ヒットすると思ってたよ」と、自信満々におっしゃるものです。