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ウルトラシリーズの人気者? 2020年の刺客「ケムール人」 その謎めいた魅力とは

恐怖を倍増していた「白黒画面」

ケムール人のスーツアクターをつとめた、俳優の古谷敏氏。ULTRAMAN ARCHIVES『ウルトラQ』Episode 19「2020年の挑戦」Blu-rayに収録(画像:円谷プロダクション)
ケムール人のスーツアクターをつとめた、俳優の古谷敏氏。ULTRAMAN ARCHIVES『ウルトラQ』Episode 19「2020年の挑戦」Blu-rayに収録(画像:円谷プロダクション)

 さて、肝心の「2020年の挑戦」ですが、はっきり言いましょう。

 これ、滅茶苦茶怖いです。特に白黒だと恐怖が倍増します。不意に現れる謎の液体。触れれば次の瞬間、その人は消えてしまう。序盤はこのようなSFサスペンス仕立てで物語が進行していきます。

 やがて姿を現したケムール人は、その伸びやかな手足でターン、ターンと跳ねるように街を駆けていきます。「フォッフォッフォッ」と余裕ありげに声を発しながらパトカーよりも速く走る姿は、ケムール人の身体能力は人類をはるかに上回る恐るべきものだと、観た人すべてが容易に理解できる秀逸な演出となっています。

 この時ケムール人のスーツアクターを務めていたのが、後にウルトラマンのスーツアクターを演じた古谷敏氏です。長身かつ細身の体形をしており、ケムール人を演じたことをきっかけにウルトラマンやケムール人をデザインした成田亨氏に抜擢されました。

初期ウルトラマンシリーズの怪獣造形で中心的役割を果たした高山良策氏が晩年に遺した「ケムール人」の怪獣人形(画像:円谷プロダクション)
初期ウルトラマンシリーズの怪獣造形で中心的役割を果たした高山良策氏が晩年に遺した「ケムール人」の怪獣人形(画像:円谷プロダクション)

 成田氏にとっても、ケムール人のデザインは会心の出来だったそうですが、実は長い間、ケムール人の体色は知られていませんでした。本放送が白黒だったためか当時撮影されたスチール(写真)も白黒のものしか残されておらず、1986年になって特撮雑誌に成田氏自身が塗装したフュギュア写真が掲載され、ようやく明らかになりました。

 2012年に放送された「総天然色 ウルトラQ』でのケムール人は、成田氏の着色をもとに藍色っぽい青色に着色されています。ただしケムール人の登場シーンは夜間なので、暗めの色のキャラクターの撮影はかなり難しかったようです。

 さて、『ウルトラQ」登場後のケムール人ですが、その印象深さとデザインの優秀さも相まって、その後のウルトラシリーズにもたびたび登場しています。『ウルトラマン』『ウルトラマンギンガ』『ウルトラマンX』と、昭和から平成にかけて出演を果たしたケムール人は、果たして令和でどのような姿を見せてくれるのでしょうか。今年2020年に新たなケムール人と出会えることを信じて、ここで筆を置きたいと思います。

(早川清一朗)

【画像】「2020年」でも活躍? ケムール人と『ウルトラQ』の軌跡(8枚)

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