故・上原正三氏が手掛けた『秘密戦隊ゴレンジャー』 「正義と悪」を子供たちに示す
上原正三氏が命を吹き込んだ『ゴレンジャー』

しかし何より魅力的だったのは、ゴレンジャーたち5人の戦士ひとりひとりのインパクトでしょう。
アカレンジャー、海城剛を務めあげたのは誠直也さん。特撮番組としては既に『ファイヤーマン』で主役を務めた実績もあり、その風貌はド迫力そのもの。カッコいいというよりも強そうな雰囲気をバリバリに出していましたが、実際に当時は「芸能界けんか最強」とも言われていたそうです。多くのテレビ、映画にも出演しており、2012年には『海賊戦隊ゴーカイジャー』の最終回にアカレンジャー/ 海城剛役として出演し、元気な顔を見せてくれました。
アオレンジャーを演じたのは宮内洋さん。多数の特撮作品に出演しており、日本の特撮を語るときは絶対に外せない人物です。ゴレンジャーでは当初は二番手役としてのアオの配役が不満で断ろうとしていたそうですが、プロデューサーが「アカが宮本武蔵ならアオは佐々木小次郎だ」と語り口説き落としたそうです。
そしてゴレンジャーと言えば忘れてはならないのが、キレンジャーです。初代は畠山麦さん、二代目はだるま二郎さんが演じています。キレンジャーと言えばカレー。カレーと言えばキレンジャーと言うくらいにカレーを食べるシーンのインパクトが強いキャラで、ゴレンジャーを見た後、母親に「カレーが食べたい」とねだった記憶があります。しかし残念ながら畠山さんはその後、テレビドラマ『特捜最前線』の撮影中に自殺してしまいます。その時はアカレンジャー役の誠さんも撮影に参加しており、突然の訃報に大きなショックを受けたことを後に明かしています。
唯一の女戦士、モモレンジャーは小牧りささん。その太ももから繰り出されるキックは世の少年をとりこにしました。ちなみについさっきまで「ピンクレンジャーじゃなくてモモレンジャーにしたのは、モモの方が語呂がいいからかな?」と思っておりましたが、小牧さんの太ももから名付けられたとたった今知りました。はい。気持ちはよく分かります。
ゴレンジャーチームの弟分、ミドレンジャーを演じたのは伊藤幸雄さん。やたらなぞなぞを出してくる印象が強いキャラクターで、ゴレンジャーの空気にコミカルさを加えるために一役買っていました。 なぜか戦闘中によくやられていたような記憶もありますが、ダメージ担当だったのでしょうか。
この5人の戦士が時にシリアスに、時にコミカルに戦い抜いた2年間は、筆者のみならず、多くのファンの心に刻み込まれています。全84話のうち、上原氏が担当したのは実に51話分にのぼります。ゴレンジャーの魂とも言える上原氏に、今この場を借り、お礼を言いたいと思います。
面白い作品をたくさんたくさん作ってくださって、本当にありがとうございました!
(早川清一朗)