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10円が宝物だった懐かしき「駄菓子屋」 ガンダムシールを買う?フィリックスガム?

昭和の時代には子供たちが集まっていた「駄菓子屋」は、現代ではほとんど見かけなくなりました。1枚の10円玉が宝物だった時代の懐かしい思い出を振り返ります。

10円の使い道を真剣に考えた

ひと昔前は店先にこのようなゲーム機が、子供の集まる店に置かれている光景が見られた(2006年、佐藤勝撮影)
ひと昔前は店先にこのようなゲーム機が、子供の集まる店に置かれている光景が見られた(2006年、佐藤勝撮影)

 30年以上前には町のあちらこちらに存在した駄菓子屋は、いまやあまり目にすることはありません。ほんの数坪の小さな店内にはお菓子やおもちゃがずらりと並び、わずかな小遣いで何を買おうか、子供たちを真剣に悩ませたものです。社会での生き方の第一歩を学ぶ場であった子供たちの社交場、駄菓子屋を、ライターの早川清一朗さんが回想します。

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 今、財布の中に入っている10円玉を数えることはありません。しかし40年近く前には、ちょっとしたお手伝いでもらえた数枚の10円玉は、まさに宝物でした。10円でフィリックスガムを買おうか、20円で『ガンダム』のシールを買おうか、それとも30円でベビースターラーメンを食べようか、真剣に悩んだ日のことを、ふとしたときに思い出します。

 思えば駄菓子屋での日々が、買い物の仕方や我慢といった、社会に出ていくための基礎の基礎を、教えてくれた気がします。目の前にどれだけ欲しいものがあったとしても、お金がなければ手に入れられないのです。

 お金がない。でもあれが欲しい、これが欲しい。どうしよう、お母さんに小遣いをねだろうか。お手伝いをしてお駄賃をもらおうか。空き瓶を拾ってきて公園の水道で洗って、酒屋さんに持っていこうか。知恵を絞って頑張って、どうにか手に入れた数十円のお金を握りしめて駆け込んだ駄菓子屋で、ベビースターラーメンとガンダムのシール2枚を買ったときの高揚した気分は今も忘れられません。もう、その駄菓子屋はずいぶん前に駐車場になってしまいましたが、今でもその前を通ると、あのころの思い出が鮮明によみがえってきます。

 スーパーボールのくじ、アイドルのプロマイド、爆竹、銀玉鉄砲、シール、ベーゴマ、めんこ、くじ付きガム、モロッコヨーグル、すもも漬け、さくら大根。店の隅や、前に置かれていたインベーダーやパックマンの筐体にしがみつくようにして夢中でレバーを操り、友達と無邪気にはしゃいでいたあの空間の記憶は、普段思い返すことはなくとも、ふとしたきっかけであふれ出る、宝石のような思い出となっているのではないでしょうか。

【画像】好きな駄菓子は何だった?

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