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特撮の「自衛隊」が怪獣を撃墜? 「やられ役返上」のきっかけとなった衝撃のひと言とは

特撮における「自衛隊」イメージを変えさせたひと言

2025年4月5日からNHKで放送開始した、アニメ『GAMERA -Rebirth-』  (C)2023 KADOKAWA/ GAMERA Rebirth Production committee
2025年4月5日からNHKで放送開始した、アニメ『GAMERA -Rebirth-』  (C)2023 KADOKAWA/ GAMERA Rebirth Production committee

 そのイメージを変えさせた人物のひとりが、樋口監督です。あるインタビューで、胸を打たれたエピソードを明かしています。それは、ある自衛官の子供が、友達から「おまえのお父さん、負けてばかりだな」などとからかわれたと聞いたことでした。樋口監督は、「なんとかしなければいけない」と思ったそうです。そしてその想いは演出からあふれます。

『ガメラ 大怪獣空中決戦』は自衛隊全面協力ですから、一部の隊員をはじめ、あらゆる装備は基本的に本物です。衝撃なのは、空飛ぶ『ガメラ』を、実在のミサイル「81式短距離地対空誘導弾(短SAM)」で撃墜するシーンです。「ガメラ」は富士の裾野に落下し、自衛隊は追撃。映されたのは本物の「戦闘機F-15J」や「74式戦車」などの射撃映像でした。このように、映画用の新兵器などを登場させず、自衛隊が実在する装備品で怪獣に挑んだのはリアルでした。

 自衛隊出動までのプロセスや法的根拠といった部分も描かれました。緊急案件が起きても原則として「自衛隊」は出動できません。「自衛隊」の最高指揮官は内閣総理大臣なので、例えば、都道府県知事からの出動要請があり、閣議決定を経て、自衛隊は出動となります。

「ガメラ」が福岡の街を進撃するシーンで、なぜ攻撃をしないのか問われ、「武力行使が認められるのは防衛出動の場合に限られている」、「相手による攻撃が行われなければ、こちらから攻撃することは許されない」と、現場にいる人間とて融通が利かない体勢にじれる心情がセリフで説明されています。『平成ガメラ』以前の特撮作品で、このような現実の法律の流れは描かれていないと思われます。

 本作では、総理大臣の登場や閣議のシーンなどはありませんが、TVニュース報道で「攻撃が閣議で決定した」、「攻撃があるので近隣住人は避難」、他にも、道路や鉄道の状況、情報を伝えていて、さながら大災害発生時のシミュレーションのようでした。観る者には、過去の特撮とは一線を画すリアルを感じた作品だったでしょう。

「キネマ旬報」ベスト10に選ばれる高評価

「自衛隊全面協力」が成功の鍵だったのはもちろんですが、低予算で工夫して撮影された特撮技術のクオリティーの高さも付け加えたいです。特に、東京タワーに居座る、夕日バックのギャオスの画は「美」です。

『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、1995年の配給ベスト10には入りませんでしたが、「キネマ旬報」ベスト10に怪獣映画として初めて選出されるなど、高評価を受けます。また、翌96年には続編『ガメラ2 レギオン襲来』、97年に『ガメラ3 邪神覚醒』と、平成シリーズ3部作が製作され、いずれも自衛隊が活躍して、作品自体も高い評価を受けています。

 冒頭でも言いましたが、今年は初代『ガメラ』誕生から60周年を迎えます。ネットでは、「何か動きがありそう」と、ファンの間で期待が高まっていますが、果たして……?

(石原久稔)

【画像】すげぇぇぇ! これがリアルに再現されたガメラ(1995)の頭部です(7枚)

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