大人気ウルトラ怪獣・キングジョーの「下半身」は未完成? 撮影当時何があったのか
『ウルトラセブン』の宇宙ロボット「キングジョー」の着ぐるみは、ある部分が欠落したまま撮影されました。その部分とは……どこか分かりますか?
確かに「膝」部分をよく見てみると、何か足りない?

『ウルトラセブン』に登場した屈指の人気怪獣といえば、宇宙ロボット「キングジョー」です。その人気ぶりは令和のいまも健在で、2022年9月10日放送の『発表!全ウルトラマン大投票』(NHK)の「ウルトラ怪獣」部門では、堂々の5位にランクインしました。
これは、『ウルトラセブン』に登場するあらゆる怪獣のなかで、最も高い順位です。まさに、ウルトラシリーズを代表するロボットと言えるでしょう。
そのキングジョーの魅力といえば、なんと言っても不思議なビジュアルです。人型のロボットに、テトラポッドを組み込んだような姿のインパクトは抜群でした。ただ、実はあのキングジョーの姿は、「未完成」だったことをご存じでしょうか。
キングジョーは成田亨さんがデザインを担当し、高山良策さんが着ぐるみを造形しました。この初期ウルトラ作品の美術を支えたふたりの天才が生み出した宇宙ロボットは、『ウルトラセブン』劇中では前後編でセブンを追い詰めます。
黄金に輝くボデイの質感とは裏腹で、セブンを襲うその動きは滑らかでした。また、顔も初期段階では鬼面のように恐ろしいものでしたが、最終的にあの「オモチャ」のようなものに変更されています。結果として、絶対に意思疎通ができない殺戮マシーンとしての恐怖感が俄然高まったのです。
また「キングジョー」の印象を決定づけるのが、頭部、関節部分に取り付けられた「円筒」のようなパーツでしょう。セブンの上にのしかかるとき、この突起がガシガシと当たるため、妙にリアルな痛みを想起させます。
そして今回、注目すべきはキングジョーの「膝(ひざ)」です。腰回りから頭部にかけて突起が多いのに対し、膝から下はかなりこざっぱりとしています。もちろん、シルエットとして、現状でも十分美しいのですが……実はこの膝には本来、突起のパーツが装着される予定だったのです。
実際、デザイン画を見てみると、キングジョーの膝には本編にはないパーツが描かれています。参考書籍でインタビューを受けた高山さんの奥さんの言葉を借りれば、膝部分の突起は「お茶の缶の蓋」のような形です。なぜそれがなくなったのかというと、「うっかり」ミスでした。造形担当の高山さんは、その膝パーツを取り付けることを忘れたまま、キングジョーの着ぐるみを納品してしまったのです。
高山さんは慌てて持って行ったのですが、残念ながら、撮影には間に合いませんでした。完全な無機質「宇宙ロボット」の背景には、天才、高山さんの人間らしいエピソードがあったのです。こんな珍しいミスの回に限って「前後編」というのは、高山さんも悔しい思いをしたかもしれません。
大人気のキングジョーは、ソフビはもちろん、後のウルトラシリーズでもたびたび再登場しています。しかし、キングジョーの膝はさっぱりしたままでした。私たちは「本当のキングジョー」の姿を、一度も観たことがないのです。
参考文献:『怪獣とヒーローを創った男たち: 特撮世界の造型師たちが語る時代を飾った作品群の製作秘話』(辰巳出版)
(片野)
