【追悼】岸部四郎さんの代表作『西遊記』 ひょうひょうとした名脇役だった
「ザ・タイガース」の新メンバーとして芸能界デビューし、俳優・タレントとして活躍した岸部四郎さんが亡くなりました。岸部さんが沙悟浄役で出演した『西遊記』は、日本だけでなく海外でも人気を博し、翌年には続編も制作されています。洋楽好きで、トークが得意だった岸部さんのひょうひょうとした魅力が出ていた人気ドラマ『西遊記』を振り返ります。
楽器が弾けないのに「ザ・タイガース」に加入
俳優・タレントの岸部四郎さんが、2020年8月28日に亡くなりました。拡張型心筋症による急性心不全で、千葉県の病院で亡くなったことが9月15日に報道されました。享年71歳でした。
岸部さんは1949年の京都市生まれ。9人きょうだいの四男でした。『相棒』(テレビ朝日系)などに出演している俳優の岸部一徳さんは、2歳上の実兄になります。
憲兵だったお父さんは、終戦後は趣味の世界に生き、実家は経済的には厳しかったそうです。岸部さんは中学に入ると、ラジオで洋楽に熱中するようになります。音楽雑誌「ミュージック・ライフ」も熟読し、ビートルズなどの最新音楽情報に精通していました。
岸部一徳さんが沢田研二さんらと1966年に結成した「ザ・タイガース」には、遊学先のLAから呼び戻される形で1969年に加入。加入時にはギター演奏ができなかった岸部さんですが、もっぱらMCを担当し、人気者になっていきます。バンドメンバーからも可愛がられたそうですから、憎めない魅力の持ち主だったようです。
円谷プロが特撮を担当した『西遊記』
1971年に「ザ・タイガース」は解散しますが、岸部さんはタレント、俳優として売れっ子になります。俳優としての代表作は、なんといっても1978年に放映された『西遊記』(日本テレビ系)でしょう。特撮パートは円谷プロが担当。脚本は『ウルトラマン』(TBS系)でおなじみの佐々木守氏、『まんが日本昔ばなし』(TBS系)で知られる沖島勲氏らが手掛けていました。
孫悟空役には元「ザ・スパイダース」の堺正章さん、猪八戒役には個性派俳優としてブレイク中だった西田敏行さん、そこに関西弁でしゃべる沙悟浄役の岸部四郎さんが軽妙に絡むというコメディ色の強い配役でした。3人はアドリブ感満載のやりとりで、視聴者を楽しませました。
三蔵法師には、夏目雅子さん。この起用は好評を博し、以降の日本で作られる『西遊記』の三蔵役はその時代を代表する美人女優がキャスティングすることが踏襲されるようになります。『西遊記』放送時の夏目さんは20歳、いちばん年長の堺さんは32歳、西田さんは30歳、岸部さんは29歳でした。当時はずいぶん大人に見えた4人ですが、思いのほか若かったことに驚きます。