60周年『ウルトラマン』の「危険な撮影回」とは? 「2人」入る着ぐるみと大量の火薬で現場は火の海
円谷特撮の真骨頂? 火薬とガソリンを使った過酷な撮影

映像でも分かるように、コンビナートでは何度も爆発が起こりました。巨大な火柱が立ち上り、炎は最後まで燃え続けています。
実際、この回の撮影はシリーズ屈指の危険な現場でした。火薬とガソリンを大量に使用するため、撮影前には関係者全員に安全面の注意が徹底されていました。
ウルトラマンを演じるアクターの古谷敏さんは、もしステージが火事になった場合に備えて避難経路を確認していました。また、炎のなかを動くペスターに異変を感じたらアクターを救助してほしいとスタッフから頼まれていました。
撮影が進み、ウルトラマンは身長ほどもある火柱のなかへ飛び込みます。炎の熱さはすさまじく、マスクの目の隙間から熱風が入り込むほどの過酷な状況で演技を続けました。
一方、ペスターを演じた荒川輝雄さんと清野幸弘さんも、海から上陸して炎のなかを進むシーンについて、「火と水が同時に襲いかかってきた。本当に怖かった」と振り返っています。古谷さんによれば、スーツアクターにとって最も恐ろしいのは「火」と「水」なのだそうです。
さらに、カメラマンの髪の毛や、照明スタッフのシャツが焦げたり、爆発で飛び散った破片でやけどを負うスタッフまで出たりするなど、撮影現場は壮絶を極めました。ただ、爆発シーンの火の回り方やタイミングなどは全て計算し尽くされたもので、業界では、「円谷特撮だからこそ成し得た撮影」だと言われているそうです。
こうした状況を考えると、ペスターとウルトラマンが炎のステージで長時間、投げ飛ばし合うような格闘戦を行うのは、現実的には極めて難しかったのでしょう。だからこそ、ペスターを早く倒し、その代わりに、炎を鎮火させる「ウルトラ水流」のシーンをクライマックスに据えたのではないでしょうか。
第13話「オイルSOS」は、ペスターを倒すこと以上に、巨大な石油火災という災害から人びとを救う物語でした。派手な格闘戦はありませんでしたが、その分、危険と隣り合わせの現場で撮影された炎の迫力と、ヒーローが災害に立ち向かう姿は、60年を経た今でも色あせない見どころとなっています。
(玉城夏)
※参考資料
『ウルトラマンになった男』(小学館)
『ウルトラマン研究読本』(洋泉社)

