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手塚治虫が描いた異色恋愛マンガ3選。普通でない「愛」だからこそ切ない…?

2月14日はバレンタインデーですが、昨今ではリモートワークが増え、職場で義理チョコのやりとりをせずに済むことに、ホッとしている人もいるのではないでしょうか。今年2021年のバレンタインは、“マンガの神さま”手塚治虫先生が残したユニークな恋愛作品に触れてみるのはいかがでしょう。どれも普通ではない、でも切なくなる恋愛ものです。

タブーなき愛を描き続けた“マンガの神さま”

手塚治虫文庫全集『やけっぱちのマリア』(講談社)
手塚治虫文庫全集『やけっぱちのマリア』(講談社)

 2月14日はバレンタインデーです。チョコレート好きな漫画家といえば、“マンガの神さま”手塚治虫先生。徹夜作業にチョコレートは欠かせなかったそうです。特にお気に入りだったのは、「HERSHEY’S」の板チョコだったとのこと。バレンタインデーにちなんで、手塚先生が描いた恋愛マンガを紹介します。

 SFやファンタジーものを得意とした手塚先生が描いた恋愛の世界は、ユニークなものが多いのが特徴です。同性愛をテーマにした『MW』、近親相姦を扱った『奇子』など、タブーなき愛を描き、読者を驚かせてきました。『ブラックジャック』の一編『春一番』は、大林宣彦監督によって恋愛サスペンス映画『瞳の中の訪問者』(1977年)として実写化されています

 さまざまな愛の形を描いてきた手塚先生ですが、数多い作品のなかから胸がキュ~ンとする純愛マンガ3編を紹介します。

孤独な少年を救ったのは、二次元の少女

『るんは風の中』が収録されている、手塚治虫漫画全集『タイガーブックス』第4巻
『るんは風の中』が収録されている、手塚治虫漫画全集『タイガーブックス』第4巻

 まず最初に紹介するのは、手塚治虫漫画全集『タイガーブックス』第4巻に収録されている、『るんは風の中』です。1979年に発表された、ちょっと不思議な短編マンガです。

 主人公のアキラは中学までは明るかったものの、高校に進学してからはふさぎ込みがちです。クラスの雰囲気になじめず、学校に行くのが億劫になっていました。そんなとき、アキラはガード下の壁に貼られていた一枚のポスターが目に留まります。

 ポスターの中の少女が、アキラに向かって微笑んでいます。アキラが見惚れていると、「すごーく熱心なのね」「見つめられて光栄よ。ポスターはそれがしあわせなの」と少女は話しかけてきました。友達のいないアキラは、少女を「るん」と呼び、いろんなことを打ち明けるようになっていきます。るんに励まされ、アキラはつらい日々を乗り切るようになります。

 一時は自殺することも考えたアキラですが、るんは懸命に呼び止め、考え直させます。るんのモデルになった“少女”が現実世界にはいるはず。死ぬのは、その“少女”に会ってからでもいいじゃないと。アキラは広告会社を調べ、ポスターを撮ったカメラマンの名前を聞き出します。アキラは生きることに前向きになっていました。そして、るんのモデルとなった“少女”と、ついに対面する日が訪れます……。

 孤独な少年がポスターの少女に恋をしてしまうという、マンガ執筆とアニメ制作に生涯を捧げた手塚先生ならではのロマンチックなラブストーリーです。1985年にオリジナルビデオ作品としてアニメ化され、2000年には『手塚治虫劇場』(テレビ朝日系)として実写ドラマ化もされています。実写ドラマ版でるんを演じたのは、当時10代だった池脇千鶴さんでした。アキラは今井翼さんが演じていました。

 池脇さんは現在放映中の深夜ドラマ『その女、ジルバ』(フジテレビ系)で高齢バーに勤める新人ホステスのアララを演じ、話題を呼んでいます。『その女、ジルバ』の原作は、2019年の手塚治虫文化賞マンガ大賞の受賞作。池脇さんは、手塚先生と少なからず縁のある女優だと言えそうです。

【画像】手塚治虫が大作シリーズで描いた、さまざまな「永遠の愛」(6枚)

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