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【シャーマンキング30周年への情熱(52)】ホロホロが気付いたシャーマンの本質と「弱肉強食」の意味

2021年4月から放送中のTVアニメ『シャーマンキング』第35話。盛りだくさんの内容が描かれるなか、ホロホロの気づきはシャーマンにとって重要なものでした。「弱肉強食」の意味について解説します。

数字が低いから「自分は弱い」と思うのは間違い?

自身の「巫力」という数値に絶望し、窮地に追い込まれたホロホロ。TVアニメ『シャーマンキング』35話より (C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京
自身の「巫力」という数値に絶望し、窮地に追い込まれたホロホロ。TVアニメ『シャーマンキング』35話より (C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京

 2021年12月9日(木)放送のTVアニメ『シャーマンキング』第35話。今回は怒濤の展開でした! 父の言動から気づきを得たホロホロの戦い、ついに登場した「ガンダーラ」、チョコラブとルドセブたちとの因縁……実に盛りだくさんです。それではまず34話から続いたホロホロの戦いから振り返ってみましょう。

 このエピソードを理解するためには、「巫力(ふりょく)と霊力」の違いを知る必要があります。巫力とは「シャーマンが持つ霊能力」のこと、霊力とは「持霊自身の力」です。これが巫力を超えているとシャーマンはその霊を扱えません。無理をすると最悪の場合、精神が崩壊して死に至ります。わかりやすいですね。しかしこれは別の見方をすることができます。

 まず霊力の合計が巫力以下なら、持霊を何体も同時に扱えます。麻倉葉の祖父・葉明やファウストVIII世などがそれを示しています。次に、どんなに巫力が高くても持霊の霊力が低いこともある、ということです。これが今回のポイントです! ホロホロの父・リカンの巫力はビッグガイ・ビルより少ないのに、彼の持霊・ゴロロはビルの持霊を打ち破りました。「ゴロロの霊力がビルの持霊たちより高かった」からです。

 シャーマンの巫力を知ると、勝手に持霊の霊力も同じだろうと思い込んでしまいますが、シャーマンの巫力1000、持霊の霊力400の相手には、巫力500、霊力500のシャーマンが勝てます。巫力の数値化にこだわることの愚かさ、罠がここに潜んでいたというわけです。

 そしてホロホロは同時に「弱肉強食」の意味にも気付きました。例えば数学50点と英語100点ではどちらが「学生として」優秀でしょう? 答えは「わかりません」。ふたつは比べられないからです。しかし50点は劣っていると思う人がいるかもしれませんね。これも数字の恐ろしさです。

 シャーマンも同じで、巫力はひとつの要素に過ぎません。それで全てが決まるわけではないのです。なのにホロホロは、自分の巫力が低いから「シャーマンとして」弱いと勝手に決めつけ、「弱肉強食」と言って諦めていました。リカンの言葉でやっとその間違いに気付き、自分が得意とする氷の世界での勝負に出たのです。

 ブロッケンはこれを理解できず屁理屈だと言いましたが、皆さんはどう思いますか? 筆者はクリエイターである武井先生らしい考え方だと、凄く納得しています。

【画像】3つの場面で死闘が同時進行? アニメ『シャーマンキング』35話(7枚)

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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k