【シャーマンキング30周年への情熱(62)】最終局面の戦いで露呈した「覚悟」の違い
決まった覚悟と揺れる覚悟の明確な対比

竜の活躍でナマリを撃破した一同は、続く「谷のプラント」へ向かいます。覚悟の上とはいえナマリを殺したこと、それをあと9回続けなければならないことに心が揺らぐものの、手を汚した蓮とホロホロが率先して気持ちを切り替えようとします。このシーンはふたりの精神の成長と同時に、まだ割り切れていないリゼルグとの対比が明確に描かれている深い場面です。
リゼルグの魅力のひとつは優しさですが、非情になれないことが大きな欠点でした。ここでもそれが悪く出ています。直前に葉は「済んだことに囚われるな。じゃねえと変化する状況に心が負けるぞ」と竜に語っており、揺るがない覚悟を表明していますが、対してリゼルグはナマリの死を受けて揺らいでいます。
チョコラブが「殺すことに慣れる方がおかしい」とフォローすると、リゼルグはそれに乗って弱音まで吐いてしまいます。そして心を切り替えて扉を破壊しようとする蓮とホロホロの言動に驚くのです。つまりリゼルグは彼らの覚悟を理解しきれていないわけで、それは自分の覚悟が決まっていない証拠です。
十祭司のブロンとのやりとりでは、さらに追い討ちをかけた表現がされています。蓮の死を馬鹿にされ、ホロホロを殺されたリゼルグは「そんな挑発に乗らない」と強く出るのですが、葉には強がりであることを見透かされています。敵に言われるのも悔しいものですが、味方に指摘されるのもまた、ばつが悪いものです。
ただ、もちろんこのリゼルグの弱さを追求する表現は、これからの対ブロン戦に向けたものです。ここまで自分の弱さを実感させられた彼が覚悟を決めたとき何が起きるのか、次回はそれが描かれることになるでしょう!
さて、その場面でのやりとりでブロンが語っていた「パッチソング」ですが、これは竜が的確に語っているように「シャーマンキングが絶対の存在であると疑問を抱かず信じ込むための歌」です。揺るぎない心によって巫力が増大する、自己暗示のような仕組みですね。これを繰り返し聞かされたことで、シルバは人が変わったようになってしまったというわけでした。
なお劇中で流れた歌は、原作者の武井宏之先生にイメージを聞いた上で、劇伴担当の林ゆうき先生に作っていただいたとのこと。歌詞が原作のセリフ通りでないのも、それを受けてのものだそうです。武井先生のイメージは「宗教的な歌」だったとのことですが、みなさんの耳にはどう聞こえたでしょうか?
それでは今回はこの辺で。またよろしくお願いします!
(タシロハヤト)




