夢のクルマ生んだSFドラマ『ナイトライダー』 みんな乗りたかった「ナイト2000」
漆黒のボディの先端で、左右に行ったり来たりしながら輝くセンサーの「赤い眼」。ターボジャンプで障害物を「ひとっ翔び」するそのドリームカーは、電子頭脳を搭載して自由に喋ることもできました。当時誰もが憧れた、80年代海外ドラマ『ナイトライダー』に登場するドリームカー「ナイト2000」を振り返ります。
80年代カルチャーの象徴として、近年の映画作品にも登場

1984年より『日曜洋画劇場』で国内での放送がスタートした海外SFドラマ『ナイトライダー』は、同番組内で6回のスペシャル放送を経て1987年よりレギュラー放送を開始。高度な知能をそなえた「しゃべるクルマ」が人間の相棒とともに犯罪を追うカーアクション・ドラマとして一躍大人気となりました。
近年でも、80年代カルチャーを多く取り入れたマーベル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017年)に、主人公(スター・ロード)の仮想父としてナイト2000の相棒である「マイケル・ナイト」を演じていた俳優が出演し、大きな話題になっています。国内版プラモデルがアオシマからリリースされるなど、今なお人気の衰えない
『ナイトライダー』は、今年2022年で誕生40周年を迎えます。
そこで、80年代当時の貴重な『ナイトライダー』関連商品も振り返りつつ、同作の魅力を語りたいと思います。
主人公の相棒として、人間味も見せたクルマ
『ナイトライダー』のベストエピソードといえば、皆さんはどれを思い浮かべますか? 邪悪な兄弟マシン「K.A.R.R.(カール)」の登場回? それともマイケルとそっくりの悪役「ガース」が、カスタムトラック「ゴライアス」でナイト2000を粉砕するスペシャル回?
筆者が推すのは「K.I.T.T.(キット/ナイト2000の電子頭脳)」の吹き替えを担当した野島昭生さんもお気に入りの、「ナイト2000 魔の毒液に溶ける! 決死の再生・立ち直れキット」(シーズン3の第13話)です。
このエピソードで、K.I.T.T.は廃液の沼に落ちて再起不能になりました。
ゼロから修復されて真っ白のボディで復活するものの、廃液の沼に落ちたトラウマのせいで事故前ほどスピードを出せないし、ターボジャンプもできません。それでもマイケルに強がってみせるK.I.T.T.の姿が、なんとも痛々しく感じられました。
一方、マイケルはそんなK.I.T.T.に作り笑顔を向けて励ますものの、メカニック担当のボニーには「あれはK.I.T.T.じゃない……」と辛らつな言葉を浴びせます。マイケルとK.I.T.T.を襲った最大の苦境……そのようなエピソードの積み重ねもあり、マシンとしてもキャラクターとしても魅力的だったナイト2000。当時の大人にも子供にも大人気で、みんな一度は乗ってみたいと思ったものでした。
本国アメリカでは、こんな出来事がありました。モデルとなった1982年の初期型「ポンティアック・ファイヤーバード・トランザム」の人気が加熱しすぎて、メーカー側から劇中で車名を出さないようにと要請があったそうです。以来、劇中では「黒いスポーツカー」などの表現に変わったのでした。