シュールな特撮ヒーロー『レッドマン』50周年 「赤い通り魔」と呼ばれ、現代で人気が爆発
ブレイクの要因は近年の「視聴形態」?
本作は、もととなる『おはよう! こどもショー』の放送時間が月曜から土曜の朝7時25分から8時15分の枠だったので、その間のほぼ決まった時間に放送されていました。この時間の子供といえば、普通は学校に行く支度や登校時間、あるいは教室に入っている時間です。
筆者の場合、『レッドマン』を観て怪獣が死んだのを確認してから小学校に向かい、到着すると始業時間ギリギリでした。そんなあわただしい状況で、TV番組を楽しんで見て記憶していることは無理というもの。あえて現代風に言えば、毎日出かける前のTVで星座占いを見ても、翌日には忘れているのと同じことでしょう。朝のあわただしい時間に見た作品をようやく冷静に評価できたのは、後年の落ち着いた環境で視聴した時だったわけです。
本作の再放送は「放送形態」の都合もあって行われず、フィルムも長年見つからなかったことで「幻の作品」とされていました。それが1990年代に偶然発見され、1996年にレーザーディスクで初めてソフト化される流れになります。もっとも、この時も大きな話題にはなりませんでした。
最初のネット配信は2012年で、「ニコニコ動画」で公式に配信されます。この時、レッドマンの戦いに異常さを感じる人が多く現れ、「赤い通り魔」と呼ばれるようになりました。そして、フィーバーとも言える状況になったのが、2016年にYouTubeで配信された時だと言われています。
掛け声や必殺技以外の言葉を発しない。逃げる怪獣でも「レッドファイト!」と言って戦いを仕掛ける。倒した怪獣は爆発もせず死体として残る。敵に刺さったレッドアローが墓標に見える。空を飛べるのに徒歩で帰っていく。……そういった現代の感覚とは違う部分が、ツッコミとして現在の視聴者層に受け止められたわけです。
当時はヒーローが敵を倒すのは問答無用。あのウルトラマンでさえ、たびたび残虐ファイトで怪獣を倒しています。また、前述した部分のほとんどは時間と予算の都合を考えると、当然の処置でしょう。
しかし、21世紀の感覚ではズレていたことは否めません。この感覚のズレと、いわゆる「ネット民」という新しいタイプの視聴者層が、本作の魅力を現代風に盛り上げました。例えるなら長い何月をかけて熟成されたワイン。それが本作『レッドマン』だったわけです。
その後、『レッドマン』のTシャツ、LINEスタンプが発売され、当時の資料を展示したイベントなど、当時ではありえなかったほどの人気を得ることに成功しました。さらに、この勢いはとどまることを知らず、2018年にアメコミ版『ゴジラ』を手がけたマット・フランク氏によるアメコミ版『レッドマン』が発売されています。
近年では2020年に放送された『ウルトラマンZ』の第13話で、ウルトラマンゼットベータスマッシュの外見がレッドマンと似ていたことから、カネゴンがその姿を見て「赤いアイツだ!」とおびえているシーンがありました。ちなみに両者には関連性はなく、似たのは偶然の一致だそうです。
リメイクや新作を望むファンの声も多い作品ですが、あの時代ならではの空気感は再現が難しそうです。むしろ近年、ファンにはおどろきのゲストキャラが登場する『ウルトラギャラクシーファイト』のような舞台で登場してほしいものです。もちろんセリフなしで……って、『ゴルゴ13』みたいになりそうですね。
(加々美利治)