【シャーマンキング30周年への情熱(69)】本作が掲げるテーマ「自己確立」が生まれた背景とは?
「テーマと世界観の融合」を見事にまとめ上げたTVアニメ

原作連載開始当時は、ゆとり教育制度に向け教育現場が変化していた頃でした。「ナンバーワンよりオンリーワン」へと価値観が変化する初期の初期です。まだまだ世間では、全員同じカリキュラムのなかでトップに立つことがベストで、そこから落ちこぼれた人や、そもそも同じカリキュラムを受けられないタイプの人は弾かれる……という考えが多数でした。
その価値観を悪側として描いたわけですから、当時としては早すぎでしょう。ただ、主な読者層だった学生さんたちは、価値観の転換を受けた当事者として共感できることがあり、ファンとなり支えてくれていたと思われます。
次に武井先生の体験と思いですが、幼少期の先生は「勉強しろ」と厳しく言われたりせず、感性を伸ばすような生活をしていたようです。それは学力というルールで優劣をつけるシステムから外れているので、先生は社会から弾かれる側だったわけですが、特に不幸でもなかったという体験から、ナンバーワンを求める風潮に一石を投じたかったと考えるのは自然です。
このように、時代のトレンドと先生の思いが合致して『シャーマンキング』は自己の確立がテーマになったと考えられます。
また、このテーマと世界観の緻密な関係にも注目してみましょう。シャーマンキングになれば「グレート・スピリッツ」を手にすることができるという設定は、北米先住民族の信仰がヒントです。そこでは、全ての存在は「大いなる神秘」によって生み出され、自然も動物も人間も平等です。
「大いなる神秘」は擬人化された神ではなく、まさしく劇中の「グレート・スピリッツ」的で、人間はそのもとで全てつながり共有しているという思想から、先住民族たちは富を分け合うなどしていたといいます。つまり「ナンバーワン」を目指すことはそれに逆らうことで、恥なのです! テーマを表現する世界観設定としては最適です。
原作はこの舞台を使って「自己を確立する」というテーマを何年もかけて描きました。完結まで紆余曲折があり、伝わりづらい点もあったかもしれませんが、今回のTVアニメはそれを上手く再構成してまとめており、理解しやすくなっています。Blu-ray BOXを購入する以外にも、Amazon Prime Videoなどで視聴できますから、可能な方はぜひ振り返りながら、そのテーマ性の表現に注目してみてください!
それでは今回はこの辺で! 次回もよろしくお願いします!
(タシロハヤト)