2004年版『ULTRAMAN』が今になって再評価される理由 『シン』との共通点も
『ウルトラQ』とのつながりも?

第2のポイントはSF要素です。
両作品とも可能な限りご都合主義を排し、科学的根拠や整合性を示した結果、全体的にSF色が強くなりました。
『ULTRAMAN』では巨大化する根拠を「進化」として表現。ウルトラマンは2段階で進化し、怪獣もネズミやカラスを取り込んで段階的に進化します。そうやって少しずつ完全体に近づく過程にはワクワク感があり、従来のウルトラヒーローとは異なる楽しさがありました。
一方の『シン・ウルトラマン』も、禍特対が怪獣を駆除する際の方法や、ウルトラマンの巨大化の理屈など、随所にSF要素が散りばめられていました。もともと『シン・ウルトラマン』は初代『ウルトラマン』に回帰する企画なので、初代『ウルトラマン』の土台となっていたSF要素を盛り込むのは当然の流れではあります。それでも科学的根拠を示されると納得感も違いますし、作品におけるひとつのギミックとして惹きつけるものがありました。
そして最後のポイントはファンサービスです。
『シン・ウルトラマン』は初代『ウルトラマン』の内容をギュギュッと詰め込んだ内容だったため、サプライズの部分を含めてファンサービスだらけでした。例えば劇中で発生した事件が初代『ウルトラマン』のエピソードをリメイクしたものだったり、サプライズで関連作品に触れたり……前知識があればあるほど楽しめたと思います。
『ULTRAMAN』も、主人公が転職した民間航空会社「星川航空」と社長の「万城目」が『ウルトラQ』(※)の主人公の設定そのままでしたし、主人公がウルトラマンと同化する発端の部分が初代『ウルトラマン』と同じシチュエーションでした。
※『ウルトラQ』は『ウルトラマン』の前年に放送された特撮ドラマで「空想特撮シリーズ」の1作目。主人公は星川航空のパイロットの万城目でした。
「大人も取り込む作品」として制作された『ULTRAMAN』と違い、『シン・ウルトラマン』は初代『ウルトラマン』世代と今の世代の溝を埋める架け橋として企画された『ウルトラマン』のリブート作品です。そのため制作の経緯は異なるものの、結果的に大人も楽しめる作品になったと言えます。
どちらの作品も俯瞰で見ると共通点が多いですし、その部分で皆さん、『シン・ウルトラマン』から『ULTRAMAN』をイメージしたようでした。
●『シン・ウルトラマン』好きなら一見の価値アリ!
『ULTRAMAN』最大の見どころと言えばやはり空中戦です。
当時もファンの間で話題になりましたが、ビル群の間を縫うように飛行するウルトラマンは、それまでのシリーズでは見られなかったダイナミックなアクションで感動的でした。スーツアクターを宙吊りにするだけでは表現できないCGならではの描写です。また初代『ウルトラマン』と同じ飛行シーンにこだわる『シン・ウルトラマン』では見られないシーンでもありました。
しかも飛行シーンのディレクションを担当したのは、人気アニメーターの板野一郎さんです。板野さんといえば、ミサイル群が渦を巻くように戦闘機に肉薄する「板野サーカス」演出で有名な大ベテラン。『ULTRAMAN』でも「サーカス」が効果的に演出されており、一番の見どころと言えるでしょう。
映画の規模としては『シン・ウルトラマン』に遠く及ばず、当時もウルトラマンのファン以外には見られていなかった本作。それでも『シン・ウルトラマン』と共通点が多く、『シン・ウルトラマン』が気に入ったのなら一見の価値はあると思います。どちらも「カラータイマーがないウルトラマン」ですからね。
なお主人公の真木を演じた別所哲也さんが、5月24日に「別所哲也 も、ウルトラマン ULTRAMAN でした!かつて!」とTwitterに投稿しトレンドを賑わせていました。
(気賀沢昌志)