トラウマ級の怖さを誇る特撮ホラー3作品 マタンゴ、吸血鬼ゴケミドロ、犬神の悪霊
エゴイズムがもたらす絶望『吸血鬼ゴケミドロ』

後味の悪さで『マタンゴ』に負けていないのが、松竹が製作したSFホラー映画『吸血鬼ゴケミドロ』(1968年)です。B級映画をこよなく愛する、クエンティン・タランティーノ監督の大のお気に入り作品としても知られています。
空一面が真っ赤に染まった、不吉な予感が漂うシーンから物語は始まります。羽田空港を離陸した旅客機でしたが、ハイジャック犯(高英男)に乗っ取られてしまいます。さらに運悪く、謎の火の玉に旅客機は接触し、人知れぬ山奥へと不時着するのでした。
副機長、客室乗務員、政治家、大企業の重役、心理学者らが生き残りますが、無線機も壊れてしまい、救援を求めることができません。
しぶとく生きていたハイジャック犯は、火の玉の正体=UFOに引き寄せられていきます。ハイジャック犯の顔面が裂け、アメーバー状の宇宙生物ゴケミドロにボディジャックされてしまうシーンが、とても不気味です。宇宙生物に意識を乗っ取られたハイジャック犯は吸血鬼となり、生存者たちに襲いかかります。
生存者たちは協力して宇宙生物に立ち向かうことはせず、自分だけが生き残ろうとお互いの足を引っ張り合うことになります。人間のむき出しのエゴイズムが、これでもかと言わんばかりに描かれています。ラストシーンもショッキングです。
美しい夕焼け空を眺めながら、もしも震えている人がいたら、きっとその人は『ゴケミドロ』を観てしまったのではないでしょうか。
日本の風土ならではのオカルト作『犬神の悪霊』

1970年代にオカルトブームを巻き起こしたリンダ・ブレア主演映画『エクソシスト』(1973年)の大ヒットを受けて、東映が製作した和製オカルト映画が『犬神の悪霊(たたり)』(1977年)です。タイトルだけでも充分に怖いのですが、内容は日本の風土ならではの共同体の闇を感じさせるものとなっています。
ウラン技師の加納(大和田伸也)たちが山村でウラン鉱の調査をしていたところ、誤って小さな祠(ほこら)を壊してしまったことから恐怖の連鎖が始まります。加納は村長の娘・麗子(泉じゅん)と結婚しますが、情緒不安定になった麗子は「犬神憑き」と断定され、憑き物落としのお払いを受けることになります。ここから先は、尋常ではない恐怖の物語が待っています。
犬神信仰が残る閉鎖的な山村の不気味さに加え、ウラン採鉱による汚染水が山村を集団ヒステリー状態に陥れることになります。映画のクライマックス、犬神の儀式を行う室田日出男さんの怪演ぶりが強烈です。さらには禁断の土蔵の秘密まで明かされることになります。
今回紹介した『マタンゴ』『吸血鬼ゴケミドロ』『犬神の悪霊』は、どれも危うい人間の集団心理を映し出したドラマとしても秀逸です。現在公開中の話題の台湾製ホラー映画『哭悲 THE SADNESS』やタイの祈祷師一家が体験する恐怖を描いた『女神の継承』などの新作映画と比べても、遜色のない衝撃があるはずです。
「観なければよかった!」
そう思いつつも、目を覆った両手の隙間から、驚愕のラストシーンまでを見届けることになるでしょう。
(長野辰次)




