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全国で消えつつある「白ポスト」の役割とは? 需要がなくなったとは言えないワケ

「子供に見せてはいけない図書などを入れて下さい」などと書かれた白いポストを見た記憶がありますでしょうか? 今は全国各地で数を減らしつつある「白ポスト」は、役割を終えたのでしょうか。

子供に「見せたくない」マンガ、雑誌を回収 DVDなども対象

群馬県富岡市役所付近に設置された「白ポスト」(マグミクス編集部撮影)
群馬県富岡市役所付近に設置された「白ポスト」(マグミクス編集部撮影)

 電子コミック配信大手で作る「日本電子書店連合」が、性的表現が描かれたコミック広告について、全年齢向けサイトへの配信を2025年4月末から停止しました。子どもも閲覧するサイトにこれらの広告が表示されることへの苦情が「日本広告審査機構」(JARO)に相次いでいたため、とのことです。

 こうした取り組みで思い出されるのが、およそ半世紀前から設置されるようになった「白ポスト」です。1963年、兵庫県尼崎市に始まり全国に波及した取り組みで、子供に見せたくないポルノ類の雑誌やマンガなど「有害図書」を回収するポストとして、全国の駅やバス停、公園などに設置されました。1969年には、東京都だけで500台以上あったそうです。現在でも全国に700台以上は設置されていると思われます。

 なぜ、白ポストは全国で普及したのでしょうか。

 戦後、出版物に「性的、暴力的」な内容が増える時期がありました。1956年に日本初の週刊誌「週刊新潮」が創刊され、その後、「週刊文春」、「朝日ジャーナル」などの週刊誌が次々に登場しました。これらの過激な内容はもちろん大人向けで、雑誌によっては女性のグラビアもありました。1959年には、「少年マガジン』、「少年サンデー」など、マンガ雑誌が創刊されます。マンガは戦前から「悪書」と呼ばれ、大人たちの間では子供には読ませたくない風潮がありました。

 そのような雑誌や図書が家にあると子供に悪影響を及ぼす。だから大人に持ち帰らせず捨てさせるのだ……ということで、駅前や公園などに白ポストが設置されるようになったわけです。

 この白ポストが全国的に急増したのが1970年代です。1968年に「週刊少年ジャンプ」が創刊され、永井豪先生の『ハレンチ学園』が大ヒット、作中で描かれた「スカートめくり」が学校で流行し、社会問題になります。

 社会問題となってからも、『ハレンチ学園』の人気に乗じて「H」な作品は急増しました。さらにバイオレンスやグロテスクなど、過激な作品も増えたため、教育委員会などから「悪書追放」がさらに強く叫ばれ、「白ポスト」の数は全国的に増えていったのです。

 1970年代は、本格的な「エロマンガ本」が増えて、80年代には「ビニール本(ビニ本)」が流行します。ただ、買ったはいいが処分するには「ちり紙交換」にも出しにくい厄介モノで、こっそりと捨てられる白ポストは、ある意味便利な存在でした。

 その後アダルトビデオが流行ると白ポストはVHSビデオ、そしてDVDも受け付けました。余談ですが、その中身を目当てに壊された「白ポスト」は全国に何台あったか分かりません。

【画像】赤い文字が強烈! これが「祈り」の込もった「白ポスト」です(4枚)

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石原久稔

昭和生まれのサブカル好きライター。マニアックすぎるネタを提出してよくボツになります。