【望月英の「今から始める!」洋ゲーガイド(15)】eスポーツで生まれた本物のドラマ、その結末
ホームの声援を力に、成し遂げられた「偉業」

舞台は2019年W杯セミファイナル、韓国 vs アメリカの戦いです。
W杯が日程に組み込まれている「BlizzCon」は毎回、Blizzardファンの聖地、アメリカのアナハイムで行われるので、それまでの大会を全て制覇している韓国と、いわゆるホームチームであるアメリカの対戦は、会場内の熱気が配信でも伝わって来るほどでした。
この年のBlizzconでは続編となる『Overwatch2』が発表され、試遊コーナーも長蛇の列だったのですが、そこに設置されていた大会観戦用のモニターにもたくさんの人が押し寄せ、スタッフが必死に整理を行う事態だったとか。
そんな熱狂の渦のなかスタートしたセミファイナル。W杯では5つのマップをプレイして3本を先取したチームが勝利、というルールです。
1本目は韓国チームが安定したプレイで勝利し「やはり韓国か…?」という雰囲気がよぎるなか、2本目、3本目はアメリカの勝利! 決勝勝ち抜けにリーチがかかります。
続く4本目は、韓国が意地を見せドロー、あわや延長戦かという5本目。通常、配信音声はノイズキャンセラーのようなものがあるので現地の声援は小さく聞こえる程度なのですが、この時の「U・S・A!!U・S・A!!」というコールは、配信を通してでも音割れするかと思うほどの音の波でした。
その声援に後押しされるかのごとく、アメリカのアタッカーCorey氏の怒涛のキルで不沈艦、韓国をついに降したのです。
アメリカチームは続くファイナル、中国との戦いにも勝利。4年目にして、アメリカは見事栄光をつかみました。
しかし、ファイナルは3-0と、スコアだけ見ると圧勝に見えますが、内容は全てギリギリの戦いの末のもの。仮に中国と韓国、セミファイナルで中国に敗れたフランスとアメリカが対戦していたら、また違った結末になっていたかもしれません。
次のW杯で優勝する国も、全く予想がつきません。4年という年月で、「勝ちたい」という各国の努力と「勝ち続ける」という韓国の牽引が、これだけの熱量とドラマを培い生み出したのです。
ゲーム史が彩る、eスポーツのドラマ。
今回はOWにフォーカスを当てましたが、世の中にはたくさんのゲームが日々、その歴史を刻んでいます。「スポーツ観戦」と同じくらい、「eスポーツ観戦」がメジャーな趣味として受け入れられる日は、そう遠くないかもしれませんよ。いつか現地でその熱量に触れたいものですね!
(望月英)
(C) 2020 Blizzard Entertainment, Inc.