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松嶋菜々子主演の実写版『火垂るの墓』 朝ドラ『あんぱん』に通じる切実な本音が「切ない」

スタジオジブリの名作映画『火垂るの墓』における「親戚のおばさん」は、一時的に清太たちの面倒を見ていた、いわば脇役的な存在です。では彼女は何を思っていたのでしょうか? 「母親」という新たな視点から描かれる『火垂るの墓』は、アニメ映画とは違う形で戦争の無情さを静かに突きつけます。

強く美しい母、圧巻の演技

表紙に清太と節子が描かれた『ジブリの教科書4 火垂るの墓』(文藝春秋)
表紙に清太と節子が描かれた『ジブリの教科書4 火垂るの墓』(文藝春秋)

 2025年7月15日(火)より、Netflixでスタジオジブリ制作の映画『火垂るの墓』が配信されます。幼い兄妹の視点から戦争の悲惨さを描いた本作ですが、実はこれまでに2度、実写版が制作されたことはご存じでしょうか? なかでも2005年に放送されたスペシャルドラマは、アニメ映画とは異なる視点から描かれた意欲作で、戦争の惨さと、そこで生きる人びとの複雑な心情が深く心に残ります。

 そもそも『火垂るの墓』はジブリのオリジナルアニメーションではなく、野坂昭如さんの短編小説を原作にした作品です。第2次世界大戦下、孤児となった14歳の兄「清太」と4歳の妹「節子」の過酷な日々を描いた原作は、同時収録された『アメリカひじき』とともに「直木三十五賞」を受賞しました。

 その原作を極めて忠実に映像化したのが、1988年に公開されたアニメ映画版です。親を亡くした清太と節子が親戚のおばさんに引き取られるところから物語が展開され、やがてふたりは家を出て兄妹だけでの暮らしを始めます。しかし衣食住のままならない生活は、幼い兄妹にとってあまりにも厳しく、節子は栄養失調で命を落とし、清太も後を追うように亡くなってしまうのでした。

 ふたりが家を出た原因となった「おばさん」については、「おばさんの対応が悪い」「居候で働かない清太にも問題がある」などとさまざまな意見があります。そんな彼女を「主人公」として描いたのが、松嶋菜々子さん主演の終戦60年スペシャルドラマ『火垂るの墓ーほたるのはかー』でした。

 本作ではおばさんに「澤野久子」という名前が与えられ、彼女が非情にならざるをえなかった経緯が丁寧に描かれています。久子は最初から清太たちに冷たかったわけではなく、空襲で家と母親を失った清太たちを何かと気遣い、自分の食事を削ってまで世話をしていました。しかし生活苦に加え、軍人の子である清太との価値観の違いもあって、次第に心の余裕を失っていきます。

 そして夫である「澤野源造(演:伊原剛志)」の戦死を知らされた日を境に、優しかった久子は変わってしまいました。おじやの上澄みだけを清太たちによそうようになり、我が子とは明らかに異なる扱いをし始めるのです。さらに勤労動員や防火活動に参加しない清太を非難し、ふたりが出て行ったあとも、心配する子供たちの声に耳を貸そうとはしません。

 とはいえ終戦を迎えた際には、実の娘「澤野なつ(演:井上真央)」の言葉に心動かされ、自らの意志で清太たちを探しに出かけます。ふたりの死を知ったときには、節子のドロップ缶を手に胸を痛めているような様子も描かれていました。

 一方でふたりの死にショックを受けたなつが自暴自棄になると、久子はその頬を引っ叩き、「何を甘えたことを言ってるの」「本当の戦争はこれからなの。死んだら負け。死んだら終わりなのよ」と言い聞かせます。戦後の混乱のなか、子供たちを生かさなければならないという、母親としての強い意志が感じとれる場面でした。

 ちなみに久子を演じた松嶋菜々子さんは、現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』でも、戦時中の母親「柳井登美子」を演じています。北村匠海さん演じる「柳井嵩」が出征する際、登美子は「逃げ回ってもいいから」「生きて帰ってきなさい」と語りかけており、国のために死ぬことが当然とされた時代のなかで、母としての本音をにじませていました。

 生きることを最優先してほしいという、子を想う母の姿は、どちらの作品でも強く印象に残ります。逆境に負けない母という役柄は、松嶋さんにとって新たな代表作になりつつあるのかもしれません。

(ハララ書房)

【画像】どっちの立場でも「きっついな…」 こちらが実写版で「親戚のおばさん」を演じた女優です(5枚)

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ハララ書房

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