『ウルトラセブン』アンヌ隊員の水着回「ノンマルトの使者」 トラウマ級だった二重のどんでん返し
虚しく響く、キリヤマ隊長の「勝利宣言」

物語はクライマックスへ入ります。ノンマルトが操る巨大なタコのような怪獣ガイロスが大暴れし、さらにノンマルトが奪った英国の原子力潜水艦グローリア号が海浜地帯に向かって攻撃を開始します。緊急出動したウルトラ警備隊は、グローリア号を撃沈。ダンはセブンに変身し、ガイロスを倒します。
さらに現場で指揮を執っていたキリヤマ隊長(中山昭二)は、ノンマルトの海底都市を発見し、ミサイル攻撃で壊滅させます。あまりにも、あっけないノンマルトの最期でした。
キリヤマ隊長の「我々の勝利だ! 海底も我々人間のものだ!!」という勝利宣言が、虚しく響きます。
エンディングには、さらなる衝撃が待っています。「ウルトラ警備隊のバカヤロー」という真市少年の叫び声に導かれ、ダンとアンヌが向かった先には、「真市 安らかに」と刻まれた小さなお墓がありました。お墓に花束を供えていた婦人に尋ねると、息子の真市は海が大好きで、2年前に亡くなったそうです。
「2年前、この海で死んだ少年の魂が、ノンマルトの使いになってやってきたのでしょうか?」
そんなナレーションが流れ、第42話「ノンマルトの使者」は終わるのでした。
真市少年を使者にしたのは誰だったのか?
真市少年の正体は、最後まではっきりとは明かされません。幽霊だったのか、海底人たちが甦らせた姿だったのか。また、侵略者は現人類だったのか、それとも海底人だったのか。さまざまな国によって統治されてきた沖縄出身の金城哲夫氏ならではの脚本だと言えそうです。
ネット上には、SF小説『ソラリス』が元ネタになっているのではないかという考察もあります。1961年に発表された『ソラリス』は読んでいなくても、アンドレイ・タルコフスキー監督のSF映画『惑星ソラリス』(1972年)を知っている人は少なくないでしょう。
遠い未来、不思議な海に覆われた「惑星ソラリス」を人類は発見し、観測ステーションで研究を進めていました。研究員のひとり、ケルビンの前に10年前に自殺した恋人が現れます。実はこの恋人は、意思を持つ「ソラリスの海」が、ケルビンの記憶を読み取り、恋人のコピーを生み出し、彼のもとへと向けたものだったのです。
恋人のコピーは何度消しても、すぐにまた現れます。ケルビンは恋人を自殺に追い込んだことへの自責の念で苦しみながらも、次第に恋人のコピーを愛するようになっていくのでした。
満田監督も、金城氏も『ソラリス』から影響を受けたとは語っていないので、あくまでも推測の域は出ません。しかし、もし『ソラリス』が元ネタだったとしたら、真市少年は海底人の使者ではなく、現人類と海底人の争いを嫌う「地球の海」が真市少年を甦らせたと考えることもできそうです。
怪獣ガイロスのデザインは、視聴者からの公募で採用されたそうです。偶然かもしれませんが、海底から現れる触手型のモンスターというところは「クトゥルフ神話」を思わせるものがあります。生命が誕生した「海」には、まだまだ人類が知らない多くの謎が隠されているのかもしれません。
(長野辰次)



