『エヴァ』すら“夕方放送”だったあの頃… 90年代深夜アニメの「カオスさ」に驚く
現在とは異なり、90年代のアニメはゴールデンタイムや夕方枠が主戦場でした。『新世紀エヴァンゲリオン』をはじめとする攻めた作品が、堂々と夕方に放送されていたという事実は、今となっては驚きでしかありません。ではその裏で、深夜帯にはどのようなアニメが放送されていたのでしょうか?
1995年放送の新作深夜アニメは1本だけ?

現在、アニメの多くは深夜枠で放送されていますが、ひと昔前はゴールデンタイムや夕方の時間帯がアニメの主戦場でした。『新世紀エヴァンゲリオン』が夕方に放送されていたという事実も、今では驚くほかありません。
さらに『機動戦艦ナデシコ』や『少女革命ウテナ』といった作品も、現在なら間違いなく深夜帯になりそうですが、当時は夕方やゴールデンタイムに放送されていました。では逆に90年代の深夜アニメにはどのような作品があったのでしょうか?
まずは、およそ30年前、1995年4月に放送を開始した『行け! 稲中卓球部』です。深夜アニメ戦国時代とも言える現在とは異なり、当時は深夜枠で新作アニメが放送されること自体が珍しく、この年に確認できるのは『稲中』くらいしかありません。現代につながる深夜アニメ文化が本格的に花開くのは、もう少し先のことになります。
そんななかTBS系列で深夜放送された本作は、『ヒミズ』や『ヒメアノ~ル』などで知られる古谷実先生の人気ギャグマンガが原作です。稲中卓球部のメンバーによる煩悩と欲望にまみれた日常を描き、思春期真っ只中の男子中学生ならではの下ネタも多く盛り込まれています。
2023年にYouTubeで期間限定配信された際には、規制回避のためにモザイクが多用され、話題を集めました。確かに第1話から「はみチ●サーブ」なる技が登場するインパクトを考えると、今の基準では「攻めた作品」といえるかもしれません。
さらに翌1996年には『エルフを狩るモノたち』が放送を開始しました。内容はいまでいうところの異世界転生モノで、現代日本から異世界に召喚された空手家、ミリオタ女子、オスカー賞女優の3人が、元の世界へ戻るために現地のエルフを脱がしまくるという異色の物語です。
一見するとお色気枠ですが、それだけではなく熱い展開や感動的なストーリー、魅力的なキャラクターが当時のオタク層に支持されました。視聴率も当時の深夜アニメとしては高水準だったようで、アニメファンのなかには本作を「深夜アニメの転換点」と捉える声も少なくありません。
この『エルフを狩るモノたち』の成功と、翌1997年に深夜枠で再放送された『新世紀エヴァンゲリオン』が想定以上の視聴率をマークしたことが重なり、テレビ東京が本格的に深夜アニメ放送へ舵を切ったという捉え方が一般的です。実際に1997年から深夜アニメが激増しており、現代につながる深夜アニメ文化が花開いた瞬間とも言えます。
ただ、やはり当時の深夜アニメは黎明期特有のカオスさもありました。例えば1997年1月より放送された『EAT-MAN』は、吉富昭仁先生の同名マンガを原作としながら、全編オリジナルストーリーという、いまではあまり考えられない構成でした。また1998年放送の『serial experiments lain』もカルト的な人気を博しましたが、地上波放送であることを踏まえると、かなりマニアックな作品だったといえるでしょう。
しかし裏を返せば、深夜帯という「安価な枠」にアニメが進出したからこそ、自由な挑戦が可能だったとも考えられます。深夜帯は、まさにアニメの「実験場」のような役割を果たしていたのかもしれません。
ハイクオリティな深夜アニメが毎クール作られるいまだからこそ、あえて黎明期に産まれた名(迷?)作に触れてみるのも面白そうです。
(ハララ書房)

