60周年『ウルトラQ』伝説級のトラウマ回 「お金」「管理社会」痛烈に描く
元ゼロ戦パイロットと大怪獣との決闘

山崎貴監督の特撮映画『ゴジラ-1.0』(2023年)が、日米で大ヒットしたことは記憶に新しいところです。『ゴジラ-1.0』はシリーズ第1作『ゴジラ』(1954年)だけでなく、『ウルトラQ』からの影響もうかがえます。
冷凍怪獣ペギラが再登場する第14話「東京氷河期」です。第5話「ペギラが来た!」で退治されたはずの巨大怪獣ペギラですが、別個体が生息していたようです。ペギラが南極から飛来し、東京を氷漬けにしてしまうストーリーです。
ペギラを倒すには南極に生える苔に含まれる「ペギミンH」が必要なのですが、この「ペギミンH」をペギラに浴びせるために、元ゼロ戦のパイロットがセスナ機に乗って立ち向かいます。
太平洋戦争を生き残ったものの、高度経済成長を遂げた日本社会になじめずにいる復員兵の葛藤が、わずか30分のドラマにまとめられています。特撮オタクである山崎貴監督にとっても、印象に残るエピソードだったのではないでしょうか。
このエピソードを撮った野長瀬三摩地監督は、黒澤明監督の代表作『隠し砦の三悪人』(1958年)などのチーフ助監督を務めています。黒澤監督から監督昇進を打診されたのを断ったという、かなりの変わり者です。南極を舞台にした「ペギラが来た!」と同様に、劇場映画ばりの迫力が伝わってくる回となっています。
金城哲夫が描いた管理社会への風刺劇
怪獣は現れませんが、非常に怖いエピソードとして記憶されているのは第17話「1/8計画」です。オープニングタイトルが八分割で表示されるセンスの良さや、泣ける特撮映画『ガス人間第1号』(1960年)の音楽が使われていることも印象的です。
人口が過密した東京で、「1/8計画」が進められます。人間を1/8サイズに縮小することで、住宅不足などの問題を解決しようという国家規模の大プロジェクトです。好奇心から受付会場を覗いたカメラマンの由利子(演:桜井浩子)は、間違って縮小人間にされてしまいます。
いつも行動をともにしたパイロットの万城目(演:佐原健二)たちにお別れを告げようと、なんとか飛行場までたどり着いた由利子ですが、自分の遺影が飾られていることにショックを受けるのでした。縮小された世界を「理想郷」と謳う管理社会の不気味さが、子供たちにトラウマ級の恐怖を植え付けた作品です。
巨大な受話器や鉛筆に寄りかかる縮小人間を演じた桜井浩子さんは、続く『ウルトラマン』の第33話「禁じられた言葉」では、巨大化したフジ・アキコ隊員を演じています。『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)で「小美人」を演じた長澤まさみさんも、後に『シン・ウルトラマン』(2022年)で巨大化してみせました。縮小人間と巨大人間を演じた女優は、他にはそう多くないのではないでしょうか。
桜井浩子さんを縮小させた「1/8計画」も、「禁じられた言葉」で巨大化させたのも、どちらも脚本を書いたのは金城哲夫氏でした。とても遊び心のあるシナリオライターだったことが分かります。
まだまだ面白いエピソードが、『ウルトラQ』には数多くあります。ぜひ、あなたの目もあなたの体から離し、この不思議な世界に入ってみてください。
(長野辰次)



