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『ガス人間』配信で期待集まる? 伝説の特撮『マタンゴ』 人がキノコに変わっていくトラウマ映画

水野久美さんの「美味しいわよ」というささやき

水野久美さんが「X星人」に扮した姿が表紙『別冊映画秘宝 東宝特撮女優大全集』(洋泉社)
水野久美さんが「X星人」に扮した姿が表紙『別冊映画秘宝 東宝特撮女優大全集』(洋泉社)

 無人島に流された7人の若者たちのなかには、ふたりの女性も含まれていました。笠井の愛人で、クラブ歌手の麻美(演:水野久美)と、村井の婚約者である明子(演:八代美紀)です。派手好きで奔放な性格の麻美に対し、明子はおとなしい清楚タイプの女性です。ふたりの女性をめぐっても、男たちは欲望をさらけ出すことになります。

 東宝の美人女優である水野久美さんが、マタンゴ化して妖艶になっていく姿は見逃せません。マタンゴを手にした水野さんが「美味しいわよ」と妖しくささやくクライマックスシーンは、子供にはかなり刺激的でした。人間ならざるものに変貌していく麻美ですが、欲望に忠実に生きる女性の野生的な美しさも感じさせます。

 マタンゴ化する麻美をノリノリで演じた水野さんは、その後も『フランケンシュタイン対地底怪獣』『怪獣大戦争』(1965年)など東宝の特撮映画にたびたび出演しています。

 真面目そうに見えた明子も、マタンゴの誘惑に負けてしまいます。婚約者の明子に裏切られた村井のショックは、うかがいしれません。

 薬物、アルコール、ギャンブル、宗教など、現代社会には依存したくなるものが数多く存在します。マタンゴは現代社会における、さまざまなメタファーとして読み取ることも可能です。

人間の内面を掘り下げる映画界の新しい流れ

 カンヌ国際映画祭で脚本賞にも選ばれた、デミ・ムーア主演作『サブスタンス』(2024年)は欧米で大きな話題を呼びました。「いつまでも若く、美しくありたい」と願うあまり、フィットネス番組の人気司会者はとんでもない結末を迎えます。この手の人間の肉体が変化していく「ボディホラー」は、海外ではかなり人気があります。美人女優がとんでもない姿に変わっていくだけに、ことさらショッキングです。

 また、米国の新興映画スタジオ「A24」は、『ミッドサマー』(2019年)や『関心領域』(2023年)などの新感覚の恐怖映画をヒットさせています。「A24」はモンスターの恐ろしさよりも、人間の内面を深く掘り下げる恐怖映画を数多く手がけていることでも注目を集めています。

 こうした人間の心理や肉体の変容を描く新感覚の恐怖映画は、「エレベイテッド・ホラー」と呼ばれ、映画界の新しい潮流となっています。

 本多監督と脚本家の木村武氏とのタッグ作『マタンゴ』は、人間の欲望や精神の崩壊を中心に据えており、現在のホラー映画の流れを先取りしていた作品でもあったと言えるでしょう。『ガス人間』がきっかけで、『マタンゴ』も若い世代から注目を集めそうです。

(長野辰次)

【画像】「えっ、誰…」 これが謎のキノコを食べた美人女優(当時26)のビフォーアフターです(6枚)

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長野辰次

フリーライター。映画、アニメ、小説、マンガなどのレビューや作家インタビューを中心に、「キネマ旬報」「映画秘宝」などに執筆。現在公開中の『八犬伝』(キノフィルムズ配給)の劇場パンフレットなどにもレビューを寄稿している。

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