千葉雄大の舞台出演で注目、萩尾望都『ポーの一族』はどれだけ凄いマンガなのか
別々の物語が、見事につなぎ合わされていく面白さ

物語は、18世紀中ごろのポーの村から始まり、1976年のロンドンへと続いていきます。主要な登場人物は、バンパネラとなったエドガー、メリーベル、アラン、そして、彼らを目撃してきた人びとです。
物語は時系列に沿っては進まず、エドガーと妹のメリーベルがそれぞれバンパネラとなった経緯、養父母との出会い、別れ、アランとの出会い、エドガーとアラン2人の100年を超える旅路……などが行ったり来たりしながら進みます。
「あれ? この人がさっきの人の昔の姿?ってことは何年前だ?」と、マンガも行ったり来たりしながら読むこととなります。そして、オムニバスのように見えた単話のひとつひとつが、後半にかけてだんだんと繋がっていく様は圧巻です。
私は『ポーの一族』を初めて読んだときに「少女マンガの全てはここにあったのか」と震えました。どの話に出てきても年も取らず姿形が変わらないバンパネラたちと、年を取っていく彼らを目撃してきた各年代の人びと。
双方の対比によって、物語上での時間進行を読者に教え、そしてバンパネラと人間は一緒には暮らせないという悲しさを感じさせてくれるのです。
また、出版された単行本や文庫本によって、各話を置く構成は異なり、読む本によって違ったイメージを抱きます。昨年発売された『ポーの一族 ユニコーン』でも、まさに話の順番が巧妙で、読み終わってからそのタイトルに「ううーん」と唸り声を上げてしまいます。
33年越しの想いが詰まった舞台化
1998年に発売された、『ポーの一族』文庫版1巻のあとがきにある言葉が、私はずっと印象に残っていました。
「就職時に宝塚歌劇団の演出助手をダメもとで受けたら受かり、『ポーの一族』を宝塚でやることを目標に掲げるも、20年以上叶っていない」
なかなか難しいのかな……なんて思って、このあとがきを忘れていた2018年。宝塚で初めて『ポーの一族』を舞台化することとなるのですが、その脚本演出の方こそ、このあとがきを書いた小池修一郎先生でした。小池先生の目標は、33年越しに叶っていました。
そしてその宝塚を飛び出し、小池先生の脚本演出のもと、男女混合のキャストによる舞台が2021年に幕開けします。アラン役に千葉雄大さんが起用されたことも明らかになり、ますます関心が高まっています。アランは子供っぽい性格で嫉妬深くもありながら、身体が弱く伏せがちで、柔和な雰囲気と鋭い意志を持つ千葉さんにピッタリに感じます。
連載開始から50年近く経って、新刊では新事実もわかり、その世界の深さを広げ続ける『ポーの一族』。この舞台もまた、何かの始まりに過ぎないのかもしれませんね。
(別冊なかむらりょうこ)