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BSで劇場版『サイボーグ009』放映 日本人が大好きな集団ヒーローの先駆作

野球をヒントにして生まれた9人の戦士たち

 数多くのヒット作を生み出した石ノ森章太郎氏は、東京都豊島区にあった木造アパート「トキワ荘」の出身者であることでも有名です。「マンガの神様」手塚治虫氏に憧れ、若き日の石ノ森章太郎氏は、宮城から上京。1956年に「トキワ荘」に入居し、赤塚不二夫氏、藤子不二雄(A)氏、藤子・F・不二雄氏らと切磋琢磨し、漫画家としての新人時代を過ごしました。

 サイボーグ戦士たちが9人構成となったのは、野球がヒントになっているそうです。仕事がないときは、「トキワ荘」のメンバーで仲良く草野球を楽しんでいたことが、映画『トキワ荘の青春』(1996年)などで描かれています。

 石ノ森氏は売れっ子漫画家になっても「トキワ荘」に残り、1962年まで暮らし続けました。仕事を休んで世界一周旅行を体験した石ノ森氏は「トキワ荘」に別れを告げ、1964年に結婚。その年から『サイボーグ009』の連載を始めます。プロの漫画家としての意識に目覚めた意欲作でした。

 個性豊かな『サイボーグ009』のキャラクターたちには、世界旅行の体験に加え、「トキワ荘」で過ごした青春時代への想いも託されているように感じられます。ジョーたちの父親代わりとなるギルモア博士は、「トキワ荘」メンバーの後見人的存在だった手塚治虫氏がモデルでしょうか。

 紅一点のフランソワーズは、若者が夢見る「理想の女性」像を思わせます。若くして亡くなった、石ノ森章太郎氏の姉・小野寺由恵さんをイメージしたキャラクターも、後述する『地下帝国ヨミ編』の最終話に登場します。『サイボーグ009』には、読者のイマジネーションを喚起してやまない魅力があります。

●マンガ史に残る『地下帝国ヨミ編』の最終話

『サイボーグ009 地下帝国“ヨミ”編』(講談社)
『サイボーグ009 地下帝国“ヨミ”編』(講談社)

 2023年に開催されたWBC (ワールド・ベースボール・クラシック)では、「侍ジャパン」が優勝し、大変な盛り上がりを見せました。日本人はチームプレイを尊ぶ競技が大好きです。『サイボーグ009』も異なる能力を持つ9人の戦士たちが、それぞれの能力をここぞという場面で発揮する様子がスリリングに描かれています。

 島村ジョーが天涯孤独の身であるように、9人の戦士たちはそれぞれ個人的な問題を抱え、サイボーグ化されて強靭な身体と人間離れした能力を手に入れても、その悩みを忘れることができません。人間くさいキャラクターばかりです。そんな9人は過酷な戦いを通して、家族以上に強い関係で結ばれています。

 石ノ森章太郎氏は1998年に60歳で亡くなり、『サイボーグ009』は未完のままで終わっています。ジョーたちが神々と戦う『天使編』の続きを、石ノ森氏自身の絵で見ることができなかったのは残念ですが、『地下帝国ヨミ編』の最終話「地上より永遠に」でマンガ史に残るフィナーレを一度描いているので、それで十分ではないかと思います。あれ以上に美しい終わり方は、不可能だったのではないでしょうか。

 夜空にきらめく流れ星に祈りを捧げる姉とその弟の姿を、『サイボーグ009』のファンは生涯忘れることができません。

(長野辰次)

※本文の一部を修正しました。(2023.5.21 12:00)

【画像】絵柄変わった?似てる? 石ノ森章太郎先生の死後に作られた『サイボーグ009』シリーズ(5枚)

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