ゲームシナリオライターの憂鬱… クリエイティブな現場の裏側に「やる方ない現状」
ドラマ『セクシー田中さん』の原作者である芦原妃名子さんが亡くなられてから、芦原さん同様に原作を改変されたクリエイターたちが苦しい胸の内を次々と明かしており、問題の根は深いことが明らかとなってきました。
クリエイターの立場は弱い

TVドラマ『セクシー田中さん』の原作者でマンガ家の、芦原妃名子さんが、ドラマ脚本及び契約トラブルにより亡くなられました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。この悲劇をきっかけに、芦原さん同様、原作を改変されたクリエイターたちも苦しい胸の内を次々と明かしており、問題の根は深いことが明らかとなってきています。
そのような状況下、X(旧Twitter)にて、日本シナリオ作家協会が作成した、脚本家が契約を結ぶ際の「脚本契約7原則」がトレンドに上がり物議を醸しました。7つの原則はいずれもクリエイターとしての脚本家を守るための重要なものばかりなのですが、原作者の保護についてはひと言も無く、ネットでは「自分たちのオリジナル脚本はそのように守ろうとするくせに、他人様の原作はないがしろにするのが彼らのやり方」という意見があふれる結果に終わっています。同時期にアップされた動画の内容も、批判に拍車をかける格好となりました。
ただ、脚本家の名誉のために付け加えておきますが、基本的に脚本家の立場はそれほど強くはありません。よく勘違いしている方がおられますが、「脚本家はストーリーの根幹を作り上げる絶対権限者」ではないのです。ドラマであれば、プロデューサーや役者の所属するプロダクションの要望をくみ取り、瑕疵(かし)無く脚本として仕上げなければいけません。そこに原作サイドの要求が加わることもありますが、どこまで採用されるかは主にプロデューサーの判断となるので、脚本家の裁量で動ける範囲はそれほど大きくは無いのです。現在人気の映画『ゴールデンカムイ』は、全てがかみ合った稀な例といえるでしょう。
そもそも脚本家を守るための団体があり、規約があるということは、過去に多くのトラブルがあり、権利を守るため先人たちが立ち上がったことを意味しているといえます。
また、原作サイドや原作者が弱い立場に置かれているのも事実ですが、いざとなれば「企画の中止」を宣言できます。問題は、原作となるマンガや小説などの版元である出版社が原作者に寄り添っているかどうかによりますが、これは完全にケースバイケースとなります。ただ、出版社としては映像化によりさらに売り上げを伸ばしたいという思惑があるので、中止の方向にはあまり持っていかせないようにするでしょう。