『007は二度死ぬ』の浜美枝&若林映子 異なる魅力を放つWヒロインの源流に
金星人役にピッタリだった若林映子さん

明るいヒロインのイメージが強かった浜美枝さんに対し、知的でちょっと影のある雰囲気が若林映子さんにはありました。そんな若林さんにピッタリだった出演作が、『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)です。
ゴジラ、ラドン、モスラに加え、宇宙怪獣キングギドラが初登場した『地球最大の決戦』では、若林さんもユニークなキャラクターを演じています。欧州の小国の王女役ですが、実は金星人の血筋を引くという設定でした。はるか大昔に金星人はキングギドラに滅ぼされ、金星人として目覚めた王女は地球に危機が迫っていることを予言するのでした。
若林さんはホームレス姿に身をやつすだけでなく、物語の終わりには『ローマの休日』(1953年)のオードリー・ヘップバーンを彷彿させるロマンチックなシーンも演じています。本多猪四郎監督が、若林さんの魅力を存分に引き出してみせています。
ダイヤモンドの美しさに魅了された、ギャング団の一員を演じる『宇宙大怪獣ドゴラ』(1964年)、浜美枝さんと共演した和製スパイアクションもの『国際秘密警察 鍵の鍵』(1965年)も、若林映子ファンなら見逃せない作品でしょう。
『マクロス』『エヴァ』に通じるダブルヒロイン
1960年代の東宝を代表する美女コンビ、浜美枝さんと若林映子さんの出演作を振り返りましたが、『007は二度死ぬ』がひときわ強烈なインパクトを残したのは、異なる魅力を持つ美女ふたりが対照的なボンドガールを務めたことも大きかったように思います。
クールなお姉さんキャラの「アキ」を演じた若林映子さん、キュートな海女さんに扮した「キッシー鈴木」役の浜美枝さん。こんな美女たちが間近にいては、英国諜報部員のジェームズ・ボンドもなかなか任務に身が入らなかったのではないでしょうか。
タイプの異なる美女たちが登場する作品として、SFアニメ『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984年)や庵野秀明監督のTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京系)などが思い浮かびます。ダブルヒロインものの源流として、『007は二度死ぬ』のアキ&キッシー鈴木がいるのかもしれません。
(長野辰次)