【シャーマンキング30周年への情熱(22)】神回「恐山ル・ヴォワール」の舞台・青森を訪ねる(下)
マンガ『シャーマンキング』の名エピソードとしてファンに愛されている「恐山ル・ヴォワール」の舞台を現地取材した聖地レポートも今回で完結。葉たちが滞在した旅館の建物は実在していますが、用途が違っていて……?
第6章 安井旅館
『シャーマンキング』の主人公・麻倉葉が幼少期にヒロイン・恐山アンナと初めて出会う物語が描かれた「恐山ル・ヴォワール」編(講談社『シャーマンキング 完全版』19巻、20巻に収録)は、多くのファンに支持されている名エピソードです。
これまで2回にわたって、青森駅、むつ市、恐山と、劇中で描かれた場所の現在の様子と劇中の描写を比較しながら紹介してきましたが、今回は聖地レポートの完結編として、作中のさまざまな印象的場面を取り上げます。最後まで、単行本を片手にお楽しみ下さい。
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●葉の祖母とアンナが住む「安井旅館」
まず、葉の祖母・麻倉木乃と恐山アンナが住む「安井旅館」を紹介します。なぜ紹介が後回しになったかというと、このモデルとなった建物はむつ市には存在しないからです。これは、青森を代表する有名な小説家・太宰治の生家として一般開放されている「斜陽館」がモデルとなっています。武井先生のチョイスが渋いですね!
斜陽館は、青森県の五所川原市(旧:金木町)にあります。青森市から北東に行けばむつ市ですが、南西方向なので真逆にあります。ここは歌手の吉幾三さんの出身地でもあり、また津軽三味線発祥の地でもあります。
●「安井旅館」館内の階段
安井旅館の中身は、斜陽館とはまったく異なります。しかし、ハイカラな雰囲気は踏襲されています。写真の階段は、斜陽館でも大きな特徴のひとつです。
●「安井旅館」のモデル、斜陽館の360度画像
武井先生と同じ位の年代の方なら、もしかしたら「地吹雪ツアー」という言葉を聞いたこともあるかもしれません。風の強い冬の日は、田んぼに積もった雪が風で舞い上がり、視界ゼロのホワイトアウト状態になります。これを地吹雪と言い、雪国以外の方に体験してもらおうというツアーをやって、一時期有名になったのが金木町です。
地吹雪と言えば、武井先生と筆者が通っていた青森南高等学校は、その当時田んぼの真ん中にあり、一本の専用道路が延びているだけでした。そのため冬になると、まさに地吹雪が吹き荒れ、横から風が吹けば身体の半分だけ真っ白になって顔も凍り、下手をするとメガネに氷柱ができるという、冗談みたいなホントの話がありました。
名付けて「南高ブリザード」……今では田んぼはすべて宅地になり、学校の正門ギリギリまで住宅があります。ブリザードはもう起きません。いい想い出です。