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【シャーマンキング30周年への情熱(27)】改めて振り返る、異色の主人公・麻倉葉の奥深さ

『シャーマンキング』の新作TVアニメが2021年4月からいよいよ放送開始します。周りから「ユルい」と言われ続けた主人公・麻倉葉は、20年以上前の連載当時はもちろん、現在においても他のバトル作品にはない魅力を放っています。

現代の私たちにも響く、生き方とメッセージ

主人公の麻倉葉と、婚約者の恐山アンナが描かれた、『SHAMAN KING KC完結版』20巻(講談社)
主人公の麻倉葉と、婚約者の恐山アンナが描かれた、『SHAMAN KING KC完結版』20巻(講談社)

『シャーマンキング』完全新作TVアニメの放送が、いよいよ2021年4月1日(木)に迫ってきました。そこで改めて『シャーマンキング』の魅力に迫りたいと思います。まず何よりも、バトルマンガとして一風変わった主人公・麻倉葉を紐解いてみましょう。

 麻倉葉は、とにかくマイペースで、熱血ではない人物ですが、逆にやる気がないわけでもありません。そして、目の前の状況に一喜一憂することもほとんどありません。言うなれば、徳の高いお坊さんのような……少年にしては何かを悟っているような性格です。

 本作は、世界中のシャーマンがその頂点であるシャーマンキングを目指して戦う過程で、葉が人間として成長していく……という、バトルマンガの王道に乗った作品ですが、彼は、「シャーマンキングになる」という壮大な目標に対し、そこに至る道筋はひとつではないから「なんとかなる」と考えています。そんな言動は周りから「ユルい」と言われますが、そのユルさが敵も味方もなく交流を生んでいく……という流れを生んでいきます。

 こうした主人公像は、20年以上前の連載当時も現在も、他にあまり類を見ません。ただ、葉の想いを掘り下げていくと、私たちの心に響くメッセージが込められていることに気づくでしょう。それが、この風変わりな主人公が支持されてきた理由なのです。

 葉が言う「なんとかなる」は、「やるべきことをやったのなら結果はついてくる」という意味で、奇跡が起きるということではありません。「望む結果が欲しければ努力はしなければならない」と言っているのです。

 しかし一方で「無理をしない」とも言っています。ファウストVIII世との戦いで珍しく感情を露わにして無理をした結果、窮地に立たされたことへの反省がそれでした。

 これらに込められたメッセージは、「目標を明確にすること」「それを叶えるためには努力が必要だが、方法はひとつではないこと」「ひとつずつ着実に歩んでいくこと」「焦って無理をしても辛いだけで結果は出ないこと」といえるでしょう。

 私たちは日々の生活のなかで、「何かをしなければならない」状態にいることが多いと思います。しかし、すべきことに気づけていない、あるいは背を向けている、頑張っているが焦って空回りしている……など、上手くいっている人ばかりではありません。葉のスタイルは、そのような人にとって、ひとつの道しるべになるのではないでしょうか?

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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k