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【シャーマンキング30周年への情熱(28)】ヒロイン・恐山アンナの「ブレない」役割

葉の「信念」を擬人化した存在?

『SHAMAN KING KC完結版』34巻(講談社)では、シャーマンファイトの最終局面で、恐山アンナが重要な「届け物」を用意して駆けつけるという、頼もしいシーンが描かれる
『SHAMAN KING KC完結版』34巻(講談社)では、シャーマンファイトの最終局面で、恐山アンナが重要な「届け物」を用意して駆けつけるという、頼もしいシーンが描かれる

 実は、作品の構造的な面から考えると、恐山アンナというキャラクターは、麻倉葉の信念を擬人化したものと言うことができるでしょう。

 例えば、葉は「努力をすれば結果はついてくる」という意味で「なんとかなる」と言い、一方で「無理をしすぎても辛いだけで結果は出ない」から「無理をしない」と言っていますが、このバランスを自分でコントロールすることは大変ですよね? 葉自身も、当初はこの言葉に甘えていて努力不足だった感は否めません。しかし彼も頭ではわかっていたはずです。それを擬人化したのがアンナです。ですから彼女は、徹底的に葉に努力を迫ります。

 また、葉は思想の違いを理由に相手を排除することはありませんし、むしろ寛容な心で受け入れたりもします。しかし、彼が何を考えて行動したのかの理由が必ずしも語られるとは限りません。そこでアンナが理由を説明するといった場面もあります。それがただの予想ではなく、あたかも正解として提示されるのも、アンナが葉の信念のアバターだからだと言えます。

 このように、葉の内面や信念、ブレてはいけないものを外に配置することにより、「何かあったらアンナを見れば良い」という基準が生まれます。私たちはさまざまな場面で「迷ったら基本に戻れ」と言われることがありますが、本作ではアンナこそが『シャーマンキング』という作品の基本中の基本なのです。ですから、彼女が迷ったり状況に流されたりすることはあり得ません。

 作品は作者が考えたものであるにもかかわらず、勝手にキャラクターが動いてしまい意図しない方向に進むことがあるものですが、たとえそういうことが起きてもアンナだけはブレないことが決まっているので、何かあったら彼女の言動に戻ってくればいいと言うこともできます。

 本作におけるアンナの役割がいかに重要か、おわかりいただけたでしょうか? アンナの厳しさは、作品が持つテーマの壮大さや重さ、それに挑む葉の覚悟の現れといえます。作品全体の雰囲気が持つユルさの陰にそういうものを感じていただければ、見方も変わってくるかもしれません。

 そして、重要な役割を担いつつも、アンナも劇中ではひとりの人間として描かれているので、彼女が抱くさまざまな感情や想いも読み解きながら、作品を楽しんでみてはいかがでしょうか?

 それでは今回はこの辺で。次回はいよいよアニメ放映後ということで、筆者もここで触れることができるのを楽しみにしています!

(タシロハヤト)

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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k