【シャーマンキング30周年への情熱(33)】ファウストVIII世との戦いから麻倉葉が学んだこととは?
阿弥陀丸の言葉「そんな勇気」の意味とは?

ファウストI世は、錬金術などの魔術に傾倒し、悪魔と契約していたとも言われていますが詳細はわかっていません。その神秘性からさまざまな物語が作られました。もっとも有名なのがゲーテの戯曲「ファウスト」でしょう。
この中でファウストは悪魔メフィストフェレスと契約します。「時よ止まれ、お前は美しい」と口にしたら、魂を奪われるのです。この言葉は「私は今この瞬間に大きな喜びを感じている。だからこの美しい時間よ、どうか止まって欲しい」という意味ですが、ファウストVIII世によれば、これはファウストI世が人生の最後に口にした言葉ということなので、ゲーテの戯曲はフィクションではなかったのです(本作の設定では)!
そしてファウストVIII世は、その「時よ止まれ」という言葉をエリザの現状に当てはめ、「お前は美しい」をエリザへの賛美として使っています。意味の解釈は異なるものの、時代を超えて子孫がその言葉に命を懸けているという意味では、彼が言うように皮肉なものです。
さて、結局試合はファウストの勝利で終わり、葉は涙を流して悔しがります。ここで、葉が言っていた「なんとかなる」という言葉が現実逃避のための甘えであったことがわかります。
本連載で何度か述べていますが、この言葉は本作全体を表す重要なキーワードのひとつで「人事を尽くして天命を待つ」と同じです。努力もせず望む結果が得られるという意味ではないのですが、葉にとって言葉の意味が変わる瞬間がここなのです! ではそんな葉に阿弥陀丸が言った「そんな勇気」とはどういう意味でしょうか?
恐らく阿弥陀丸が言っているのは、今まで「なんとかなる」という言葉を不安から逃げるための誤魔化しとして使っていたとしても、不安から逃げたいのはみんな一緒。重要なのはそれを克服する勇気を出すことだが、その方法も人それぞれ。「克服するぞ!」と自分を鼓舞する人もいるだろうが、「なんとかなる」とユルいことを言って勇気が出るならそれでもいい。だからその言葉を封印してしまう必要はない(但し、逃げの言葉として使うのはもうダメ)……ということなのだろうと思います。
「なんとかなる」という言葉自体に罪があるのではなく、その意味が重要なんだと、先手を打ったとも言えますね。そうでなければ葉はその言葉を封印してしまったかもしれないのですから。敗北から大きなことを学んだ葉が今後どう成長していくのか、ますます目が離せません!!
それでは今回はこの辺で。また次回よろしくお願いします!
(タシロハヤト)
(C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京