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『エヴァ』がなければ時代を作ってた?『機動戦艦ナデシコ』の「これでもか!」ぶり

1995年に放送された『新世紀エヴァンゲリオン』の大ヒットは後に「第三次アニメブーム」と呼ばれる大きな流れを生みだし、数多くの傑作が世に送り出されました。なかでも1996年10月から放送された『機動戦艦ナデシコ』は大きな注目を浴び、90年代半ばを代表する作品として語り継がれています。

「戦艦! ロボット! ボーイミーツガール!」男の子が好きな物を「これでもか」

「機動戦艦ナデシコBlu-ray BOX」(キングレコード)
「機動戦艦ナデシコBlu-ray BOX」(キングレコード)

人類を危機に陥れる謎の敵、木星蜥蜴。
宇宙を往く巨大戦艦、ナデシコ級一番艦「ナデシコ」。
局地戦対応人型機動兵器「エステバリス」。
圧倒的な数の敵を薙ぎ払うグラビティブラスト。
ミスマル・ユリカとテンカワ・アキトのもどかしい関係。
多くのファンをとりこにしたホシノ・ルリ。
軽妙さと重厚さを併せ持つストーリー。
そして徐々に明かされていく謎。

 1996年に放送されたTVアニメ『機動戦艦ナデシコ』は当時の男の子が好きな物をこれでもかと詰め込んだ傑作アニメとして、高い評価を獲得した作品です。1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』が巻き起こした通称「第三次アニメブーム」をけん引した作品のひとつであり、今なお根強い人気を誇ります。2021年9月1日に、漫画家・田中圭一さんがAmazonプライム・ビデオで本作を見た感想を「もしエヴァがなかったら90年代を代表する大ブームになっていたはず」とツイートし、大きな話題になりました。

 本作は制作スタッフにも非常に力が入っており、監督は『赤ずきんチャチャ』の演出で高い評価を得ていた佐藤竜雄氏。ストーリーエディターにはアニメ・特撮で多くの作品を手掛け実力に定評のある會川昇氏。キャラクターデザインは1990年代半ばから2000年代にかけて数々の作品で活躍した後藤圭二氏。キャラクター原案はコミカライズも手掛けた麻宮騎亜氏。メインメカニックデザインは明貴美加氏が務め、革新的なデザインをもたらしてくれました。

 松澤由実さんが歌い上げるオープニングテーマ「YOU GET TO BURNING」のポップでリズミカルなサウンドも極めて評価が高い名曲です。エンディングテーマの「私らしく」はユリカのCVを務めた桑島法子さんが、自らの意志で前に進もうとするひとりの人間の気持ちを番組の終わりを飾るにふさわしい声で奏でています。

 魅力的なキャラクターも数多く登場しますが、その中でもホシノ・ルリ(CV: 南央美/以下、ルリルリ)の人気は絶大で、放送中には脚本陣が争うようにしてルリルリを前面に押し出したエピソードも存在しています。結果、ユリカのメインヒロイン回を誰も書いていなかったというのも今となっては笑い話です。

 そのスタッフによる“ルリ推し”の真骨頂とも言えるのが、第19話「明日の『艦長』は君だ!」でしょう。ひたすらに「アキトが好き」をアピールするユリカに対し、水着姿で「あなたの一番になりたい」を歌い、切々と恋心を紡ぎ出すルリルリの姿に、多くのファンが延々とビデオデッキの巻き戻しと再生を繰り返すこととなりました。筆者自身もいったい何度ループしたのかは覚えてはいませんが、今でもそらで歌える自信はあります。

「エヴァの次」にすっぽりとはまった

『機動戦艦ナデシコ』は設定、ストーリー、サウンド、キャラクター、作画のいずれをとっても当時としては極めて高いクオリティを保有している、90年代を代表する作品です。

 しかしその人気のひとつの要因として、『エヴァ』の影響があったことは否めません。1996年3月に衝撃の最終回を迎えた『エヴァ』がもたらしたブームはアニメそのものに大きな注目を集める効果をもたらしました。『エヴァ』に飢えていたファンたちは劇場版を待ちきれず、次の『エヴァ』を求めさまざまなアニメを見るようになっていたように思えます。そこにちょうど現れたのが『ナデシコ』だったのではないでしょうか。

 さらに、それまではおもちゃを売るためのコマーシャル番組と考えられていたアニメに、実は映像や音楽、キャラクターなどさまざまな需要と市場が存在することも明らかになったのもグッズ展開に大きな動きをもたらしました。1996年10月に放送が開始された『ナデシコ』は『エヴァ』が作り出した流れに乗った最初の作品と言えるのかもしれません。

 もし、『エヴァ』が存在しなかったら、『ナデシコ』はどうなっていたのか。もちろんクオリティの高い作品でしたので、人気作品となったでしょう。しかしアニメそのものに目を向けている人間の数にかなりの差があったはずなので、今ほどの高い評価とその後の劇場版への展開が行われたのかは分かりません。ひとつ言えるのは、『エヴァ』の存在は『ナデシコ』にとって、非常に良い影響をもたらしてくれたということでしょう。

 しかし、2021年に『エヴァ』は完結しましたが、『ナデシコ』は1998年公開の劇場版以降、展開は途絶えたままです。2005年8月9日には佐藤監督の公式サイトで『ナデシコ』と『宇宙のステルヴィア』の続編制作が中止されたことが明かされています。動いていた企画が流れることはよくありますが、確実に人気を取れる作品の続編中止は並大抵のことではありません。何があったのかは分かりませんが、今でもファンは『機動戦艦ナデシコ2』の文字が画面に映し出される日を待っています。

(ライター 早川清一朗)

【画像】男性たちが今で言う“沼”に落ちていった…ルリルリの姿

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