タツノコプロ代表作『ガッチャマン』の最終回 地球を救った者を「誰も知らない」という結末
ケンの決断 あなたならどうする?

そして最終回「地球消滅! 0002」では、捕らわれたジョーとギャラクターの首領ベルク・カッツェが格闘を繰り広げますが、ジョーはめまいでピンチに。倒れ際、持っていた白い羽手裏剣をカッツェ向けて放ちますがそれもかわされます。投げたその羽は壁に当たって機械の隙間に入り込んで行きました。
戦闘員を振り切り、なんとか基地の外へ出たジョー。そこへ大鷲のケン、白鳥のジュン、燕の甚平、みみずくの竜……仲間4人のガッチャマンが駆けつけます。ようやく5人そろいましたが、ジョーには立ち上がる力さえ残っていませんでした。横たわるジョーが4人に最後の言葉をかけ涙……。「ジョーを連れて帰ろう」と皆が声を上げるなか、ケンはジョーを悟ったのでしょう。
ケン「科学忍者隊リーダーとしての命令だ。コンドルのジョーはここに残し、全員、ギャラクター本部に突入する」
一同「えぇっ!?」
ケン「ジョー、許してくれ。死ぬときはともにと誓ってきた俺たちが、今、お前を見捨てて行かねばならない」
……そう、事態は一刻を争います。ガッチャマンの任務は地球を救うこと。ケンは「俺の心だと思ってくれ」と大事な武器のブーメランをジョーに握らせるのでした。
ギャラクターの心臓部へ突入する4人はついにベルク・カッツェと対決。「ブラックホール作戦を中止しろ」と叫ぶと、総裁Xの声が響きます。「あと30分で地球は消える!」。
ここでベルク・カッツェが取り乱しました。カッツェは地球を自分にくれると約束したはずだと訴えます。しかし総裁Xは「くれてやる、粉々になり、宇宙のチリとなった地球をな!」。そう言い放つと黄金色に輝く鉛筆型の宇宙船で飛び去ってゆくのでした。だまされたカッツェ、彼は総裁Xの計画のためにミュータントにされたわけです。「こんな結末を迎えるなら、人間のままでいたかった!」嘆きながらマグマのなかへ落ちて行くカッツェ。
敵は消えました。しかし、あと30分で地球の核にミサイルが発射され人類は滅亡します。4人はミサイル発射装置を止めようと試みますが止められません。「死ぬなら、ここでみんなと一緒に死にましょう!」ジュンが涙を流しケンと抱き合い覚悟を決めます。そのとき機械の内部で異変が起きていました。
歯車に何かが挟まっている、それはジョーがカッツェに向けて投げた羽手裏剣でした。羽手裏剣が歯車のかみ合わせを悪くして破損、そして爆発します。核へ撃つはずのミサイルが暴発したため、地球は滅びずに済んだのです。
4人は不思議に思います。「なぜミサイル発射装置は壊れたのか」。装置が止まった時計は残り00:02、まるでジョーが止めてくれたようだ。でも、ジョーが投げた羽手裏剣が地球の危機を救った事実は誰も知らないのです。本部から出ると、地上は地殻変動で荒れ果てていました。大きな岩の隙間に、ケンがジョーに渡したブーメランが……さよならジョー。
最後に、南部博士が記者会見でこんなことを言います。「ギャラクターは確かに自滅しました。しかし、みなさん考えてください。ギャラクターのように悪魔的な破壊を好む心は、私たちの、あなたたちの心の片隅にも眠っているのではないでしょうか?」。そんなメッセージを視聴者に残し、『科学忍者隊ガッチャマン』はエンドとなります。
最後の雄姿を見せてほしかった
ガッチャマンに限らず、グループヒーローのアニメや特撮で、目立つリーダーではなくそのセカンドやライバルの人気が高いケースってありますよね? 『ガッチャマン』でもリーダーの1号・大鷲のケンより、キザで無鉄砲な2号・コンドルのジョーの人気が圧倒的でした。そんなジョーが最終エピソードの主役。最後は、地球を救ったのがジョーだと誰もわからない歯がゆさが残りましたが、それがジョーらしいキザなかっこよさなのだという気がします。
ただ、消化不良な点がないわけではありません。それは、このラスト2話でジョーは変身していないことです。104話で、味方のレッドインパルス員ふたりがギャラクター戦闘員として潜伏していて、変身アイテムのブレスレットを直すシーンがあるのですが、ジョーの手に渡ることはありませんでした。
ファン心理としては、ジョーが変身した姿で最後に戦うシーンを見たかった。激闘の末、頭痛の症状が出て倒されてしまう……そんな流れでもよかったのではないかと、今でもそんなやるせない思いがあります。
(石原久稔)