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『仮面ライダー』「ショッカーの黒幕は日本政府」説はホント?「フィクション」ではなかった石ノ森章太郎の社会風刺

「仮面の世界」というタイトルの意味とは?

『仮面ライダー』the second一文字隼人 (秋田文庫)
『仮面ライダー』the second一文字隼人 (秋田文庫)

 ただし、ショッカーと日本政府がまったく関係ないわけではないと一文字隼人は推測しています。「10月計画」は10分の1の価格のテレビと腕時計を販売するのが計画の肝でしたが、他社からの反発はショッカーの手が回った「政府」がもみ消すだろうと言っていたのです。政府の関係筋にショッカーがロビイングして影響を与えている、日本政府とショッカーはどこかで持ちつ持たれつの関係にあるのではないかと一文字隼人は考えているのです。

「仮面の世界」というサブタイトルも意味深です。冒頭には「人間はだれでも仮面をもっている その仮面の下に真実の顔がある」という一文が掲げられています。そこから、子供たちが首なし死体を発見する事件の発端が描かれますが、その直後に佐藤栄作(そっくりの)首相がテレビに登場し、「核兵器もちこみなどとんでもない! したがって軍国主義化しているなどという非難はあたらないのであります」と笑顔で話している場面につながります。

 うがった見方かもしれませんが、政府(首相)には国民から見える表側の「仮面」の下には別の「真実の顔」があると言っているように見えます。実際、佐藤栄作首相は核兵器を「持たない、つくらない、持ち込ませない」を意味する「非核三原則」を表明したことで知られていますが、有事の際にはアメリカに核兵器での報復を求める「核の傘」の確約を求め、沖縄に核の持ち込みを認める“密約”があると報じられていました(後に密約文書が発見されています)。「仮面の下に真実の顔」があったのです。

 また、「仮面の世界」には両親が広島で原爆によって被爆したため、白血病で苦しむ少年・浩二が登場します。カメラマンの一文字隼人は「黒い雨を追って」という原爆に関する写真集を作っていました。広島と長崎に原爆が落ちてから、まだ26年しか経っていません。

 この頃、原爆の記憶が消えていないどころか、後遺症で苦しんでいる人がいるのに、「核兵器もちこみ」が話題になるなんて……と苦い思いをしていた日本人はけっして少なくありませんでした。佐藤栄作(そっくりの)首相の顔を見て「つまんないのやってんな」と吐き捨てる一文字隼人や、佐藤栄作(そっくりの)首相が出ているテレビに向かって「ひっこめ!!」と花瓶を投げつける滝も同じような感情を持っていたのでしょう。

 石森章太郎は愛蔵版『仮面ライダー』の中で、環境破壊や核戦争の恐怖などの例を挙げつつ、「歪んだ道を歩んでいる『文明』(テクノロジーに代表される)に対する自然からの叛逆。その警告のための使者として、実は『仮面ライダー』が誕生した」と明言しています。

 公害や原爆が「歪んだ道を歩んでいる『文明』」の産物であることは明らかです。さらにその延長線上として、国民をコンピューターで管理しようという計画が描かれていました。「仮面の世界」というタイトルとあわせて考えると、表向きの計画の下に「真実の顔」があるのではないかと疑いの目を向けているように見えます。

「ショッカーの黒幕は日本政府」説は明らかな間違いですが、石森章太郎はただの時事ネタとして、公害問題や原爆の後遺症と核兵器持ち込みの問題、政府が国民に番号を付与して管理しようとした問題などを取り上げたわけではありませんでした。マンガ版『仮面ライダー』は、実に示唆に富んだ、今あらためて読む価値のある作品だと思います。

(大山くまお)

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