『プロレススーパースター列伝』でリック・フレアーを描いた、梶原一騎の「先見の明」
80年代に活躍したプロレス選手たちを題材としたマンガ『プロレススーパースター列伝』のなかで、当時日本ではまだ人気を獲得していなかったレスラーに光を当てたエピソードがありました。原作者の先見の明が光る、「狂乱の貴公子 リック・フレアー」編です。
当時の日本では不人気も、NWAの頂点に

1980年から1983年まで小学館「週刊少年サンデー」で連載され、リアルとファンタジーを織り交ぜた「梶原節」によって数多のプロレスラーの活躍が描かれた名作、『プロレススーパースター列伝』(作:梶原一騎、画:原田久仁信)。そのなかで「ワールドワイドな認知度を持つ真のスーパースター」を、あえて挙げるとしたら……? 筆者の頭に思い浮かぶのが、コミックス6巻の「アンドレ・ザ・ジャイアント」と12~13巻の「ハルク・ホーガン」、そしてコミックス最終の17巻に収録された「リック・フレアー」に他なりません。
もちろん、マニア目線で見れば登場するレスラーすべてが魅力的であることは間違いないですし、この『列伝』をプロレスの教科書とした昭和のファンも多いと思いますが、世界規模というスケールで考えると、先に挙げた3人のレスラーが、ある意味「真のスーパースター」と呼べると思います。
とはいえ、連載当時を思い起こしてみると「何で、リック・フレアー編?」と思ってしまったのも小学校高学年だった筆者の偽らざる感想です。
1981年当時に「世界最大の団体、NWA」のチャンピオンだったフレアーが『列伝』の登場人物になることは、今考えれば何ら不思議ではないのですが、正直言って当時の日本での人気はイマイチ。『列伝』のなかでも、やたらと「ハンサムなだけが取り柄のチビで短足なレスラー」として描かれているのですが、リック・フレアーの魅力は、あえていえばプロレス観戦上級者でなければ分かりづらいものかもしれません。