『ゴジラS・P』のジェットジャガー、48年前にロボットらしくない姿でゴジラを救った…?
怪獣と戦う人類の希望……? TVアニメ『ゴジラS・P〈シンギュラポイント〉』に登場するジェットジャガーは、そもそも1973年公開の映画『ゴジラ対メガロ』で一度きり登場し、ファンの心をつかんだゴジラシリーズの救世主でした。
ロボットっぽくないけどロボット?

2021年4月から放送されているTVアニメ『ゴジラS・P〈シンギュラポイント〉』は、映画『シン・ゴジラ』のヒットを受け、過去のゴジラシリーズを知らない層を狙って完全新作として製作された作品ですが、実は放送前にPVが公開された段階から、往年のゴジラファンの間で話題が沸騰していました。
「おお! ジェットジャガーだ!」
ジェットジャガーとは、1973年映画『ゴジラ対メガロ』に登場し、ゴジラとタッグを組んだ“ロボット”です。驚いたのは48年前と違うフォルムでした。ファンはこう思ったかもしれません。
「ホントにロボットだ」
……どういうことなのでしょうか?
1973年、第2次怪獣ブームの最中に公開となった『ゴジラ対メガロ』では、“ヒーローロボットが登場する”という情報に子供たちは興味津々でした。物語のジェットジャガーは青年科学者が開発した等身大ロボットで、人の言葉を理解して妥当な反応をするという、今でいうAIロボット……なのですが、スクリーンに映し出されたジャガーは、ツッコミどころ満載の姿でした。
まず、顔以外にロボットを感じないのです。例えば、ジャイアントロボならゴツゴツとしたパーツに金属感、キカイダーなら透明な頭部に機械らしさを感じます。当時は多くの特撮番組が放送されていましたが、ボディはその類に属すウェットスーツ風で、アクターがカクカクとロボットっぽく動いているようにしか見えませんでした。
最初は「怪獣」だったが、スクリーンに登場したのは…

ジェットジャガー誕生のきっかけは一般公募でした。東宝と円谷プロダクションが西友ストアの協力で「ちびっ子怪獣大学」のシンボルキャラクターを募集します。優秀作に「レッドアローン」という怪獣が選ばれました。
テレビのワイドショーで発表され、きぐるみで造られたレッドアローンが公表されますが、作者の少年はなぜか不機嫌そう。実は、少年が描いた白い怪獣と異なり、かなりカラフルに変えられていたのです。ただ、ゴジラ映画に採用されるという特典もあり、まんざらでもなさそうでした。
ところが、映画では怪獣ではなくロボットで名前も変更。当然、顔にも怪獣の面影はなく(般若の面とアントニオ猪木選手をイメージしたとか)、少年が描いた原型は完全に爆破されていました。
映画は、低予算で製作日数が20日ほどしかない急仕上げでした。そのため、有力なキャストは押さえられず、戦闘のセットが1か所しかないなど、制約だらけのなか、過去作から映像を使いまわしながら制作されていました。
そこへ、「ロボットっぽくないジェットジャガー」です。最も驚いたのが、ロボットなのに巨大化します。「ゴジラが来るまで自分がメガロと戦わなくてはいけない。その強烈な意思が巨大化させたんだろう」とセリフで言っていますが、都合良すぎです。そもそも日常生活の補助用として製造されたロボットが空を飛んで、口から液体窒素を吐きます。怪獣にコテンパンにされますが、ロボットなのに破損も故障もしません。
作品のクオリティはマニアからワーストにランクされるほどで、観客動員は78万人と伸び悩みました。
映画の出来栄えについては言いたい放題ですが、結果的にジェットジャガーはシリーズの救世主となります。怪獣づくしだったゴジラ映画に、時代の流行を加味した「ロボット」というカンフル剤を打ち込んだこと。しかし派手な武器や強力な必殺技を持たないため、基本的に弱いのです。
逆に、弱いから応援したくなる存在であり、弱いからこそ、やっぱり主役は強いゴジラになります(ここが素晴らしかった)。でも映画を観終わったあと、最も印象に残るのは終始出ずっぱりだったジェットジャガーでした。だからなのか、ソフビ人形などのグッズの売れ行きが好調だったそうです。
さらにジェットジャガーは、次作『ゴジラ対メカゴジラ』のきっかけとなります。最強ロボットとしてゴジラを苦しめたメカゴジラは人気となり、観客動員133万人へと盛り返すのでした。
さて、放送中の『ゴジラS・P』におけるジェットジャガーは、さまざまな怪獣との戦いを経て改修を受け、新たな武器を手に入れ、少しずつ洗練された姿へと変化しているようです。これからどんな活躍を見せるのか? “♪ゴジラとジャガーでパンチパンチパンチ!”で怪獣をやっつけるのでしょうか? 楽しみで仕方ありません。
(石原久稔)
